アムール川下流地方とサハリン(樺太)で約2000人の話し手がいる。ロシアではアムール方言の〈人〉を意味する自称によって〈ニブヒ語Nivkhi〉として知られ,日本ではそのサハリン方言形をとって〈ニクブン語〉の名称も用いられてきた。1930年代にアムール方言を基礎とした文字が案出され,初等教科書が編まれた。語が結合した際に第2語の語頭で広範に生じる子音交替,名詞の抱合,対象によって異なる数詞などが特徴的。格や動詞の人称は接尾法による。一人称複数には,聞き手を含む包括形と含まない除外形の区別がある。系譜的には孤立した言語であり,旧アジア諸語に含められている。ウラル語族,アルタイ諸語との関係のほか,アメリカ・インディアンの言語との類似,朝鮮語におけるギリヤーク語的要素が指摘されてきた。旧アジア諸語のうち,日本に語域があったことのある唯一の言語。今日では服部健,渡部みち子によって調査・研究が進められている。
→ニブヒ族
執筆者:宮岡 伯人
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