日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギンカガミ」の意味・わかりやすい解説
ギンカガミ
ぎんかがみ / 銀鏡
moonfish
[学] Mene maculata
硬骨魚綱スズキ目ギンカガミ科に属する海水魚。青森県以南の日本海、茨城県以南の太平洋、東シナ海、南西諸島、台湾、朝鮮半島、中国沿岸、オーストラリアなどインド洋、西太平洋に分布する。体は著しく側扁(そくへん)し、三角形状。体の腹縁は薄く、鋭く下方へ張り出す。頭部背縁は緩く湾曲し、下顎(かがく)前端から腹びれ起部までの腹縁は垂直に近い。口は垂直に開き、著しく突出させることができる。上下両顎には絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。鰓耙(さいは)は上枝に6~8本、下枝に23~25本。体には鱗(うろこ)がない。側線は背びれ基底の後端付近で終わる。背びれは稚仔魚(ちしぎょ)では3~4本の痕跡(こんせき)的棘(きょく)があるが、成長するにつれて消失する。背びれ軟条は40~45本。臀(しり)びれの基底は著しく長く、高さは一様に低い。臀びれ軟条は30~33本。成魚では腹びれ第1~2軟条は癒合して伸長し、胸びれ長の約2倍。腹びれと臀びれは著しく接近する。尾びれは広く二叉(にさ)する。体は銀白色、背側面はいくぶん青色で、側線の上下に多数の黒色の円斑(えんはん)が散在する。腹びれは黒い。沿岸域から大陸棚縁辺の底層近くに群れをつくって生息するが、ときどき河口域でも見られる。おもに底生の無脊椎(むせきつい)動物を食べる。底引網、定置網などで漁獲される。インド、東南アジア諸国では重要魚であるが、日本沿岸での漁獲量は少なく、利用価値は低い。全長30センチメートルに達するが、20センチメートルのものが多い。
ギンカガミ科には世界から現生種では本種しか知られていないが、化石では3種が報告されている。
[尼岡邦夫 2024年8月16日]