改訂新版 世界大百科事典 「クシ諸語」の意味・わかりやすい解説
クシ諸語 (クシしょご)
Cushitic
ハム・セム語族(アフロ・アジア語族)を形成する言語群の一つで,東アフリカのエチオピア,ソマリアを中心にその周辺のスーダン,ケニア,タンザニアにも行われる。古く〈クシ〉とはナイル川上流地域を指した名称である。オロモ語Oromo(別名ガラ語Galla。エチオピアを中心に話者は約800万),ソマリ語Somali(ソマリアなどで約500万)をはじめとし,ベジャ語Beja(スーダン,エチオピア),アファル語Afar(エチオピア,ジブチ),シダモ語Sidamo,アガウ語Agau(ともにエチオピア)など40余りの言語が含まれる。音声面では一群の放出音が特徴的であり,声調をもつ言語もある。語順は,主語-目的語-動詞の順が最も普通である。固有の文字はなく,古い資料も少ないが,近年現地調査に基づく多くの新しい報告も加えて,活発に研究が行われるようになった。なお,現在ソマリアでは公用語であるソマリ語の表記にローマ字が用いられており,エチオピアでは社会主義革命後エチオピア文字によるオロモ語の週刊誌が発行されている。
執筆者:柘植 洋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報