主語(読み)シュゴ

デジタル大辞泉 「主語」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐ご【主語】

文の成分の一。文において、述語の示す動作・作用・属性などの主体を表す部分。「鳥が鳴く」「山が高い」「彼は学生だ」という文で、「何が」に当たる部分をいう。日本語では、主語がなくても文として成立する。
論理学で、ある対象について何らかの主張をする判断(命題)において、主張がなされる当の対象。例えば、「犬は哺乳類である」における犬。主辞。⇔述語

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精選版 日本国語大辞典 「主語」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐ご【主語】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] subject訳語 )
  2. 形式論理学で、命題や判断によって肯定または否定される概念。たとえば、「SはPである」「SはQではない」の中のSが指示する概念。主位。主位概念。主概念。主辞。
  3. 文の成分の一つ。述語の示す動作・作用の主体、性質・状態をもつ本体を表わす。日本語では、主語は常に述語に先行し、また、主語が明示されなくても文が成り立つ。連用修飾語の一区分と見る考えも有力である。主語は現代語では助詞「が」を伴うことが多いが、説によって、「が」を伴った「桜が」の形を主語と呼び、あるいは、「桜が」の「桜」だけを主語という。主辞。〔広日本文典(1897)〕

主語の補助注記

( について ) 「話が好きだ」「水が飲みたい」などの「話」「水」を対象語と呼ぶ学説、また「彼は医者だ」「地球は動く」「酒は飲まない」など「は」を伴ったものを、「が」の主語と区別して題目語、提示語、提題語などと呼ぶ学説がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「主語」の意味・わかりやすい解説

主語
しゅご

文法用語であるが、論理学でも用いられる。論理学上は、「AはBである」といった命題の「Aは」の部分をさす。すなわち、次に述べられる属性の主体にあたるものである。文法的にはかなり複雑な問題がある。たとえば、「主語」を文の述語の表す属性や動作の主体を表すものと定義するなら、どの言語にも「主語」という範疇(はんちゅう)が存在することになる(そのような主体を表す手段がない言語などは考えられない)が、それでは、個々の言語の文法の実態をなんら考慮しない考え方になってしまう。したがって、文の述語の表す属性や動作の主体を表す(文の)成分が、そうでない(文の)成分とは異なる文法上の扱いを受けている場合にそれを「主語」とよぶという立場をとらざるをえない。その場合に注意すべきは、問題の成分の有する見かけ上の特殊性が、それが属性や動作の主体を表しているということから完全に説明できるものならば、その見かけ上の特殊性は、その成分が他の成分とは異なる文法上の扱いを受けていることを示すことにはならないということである。たとえば、日本語に「主語」が存在するか否かを論じる場合、どのような述語にもその述語の表す属性や動作の主体を表すものを同一文中に共存させうるのに、たとえばその述語の表す動作の対象を表すものはかならずしもそうではないといったことは、まったく無関係なことである。なぜなら、このような見かけ上の特異性は、いかなる属性や動作も、その主体としての物質なしには存在しないということの直接的結果にすぎず、日本語がそうした主体を表す成分を文法的にどう扱っているかということとはまったく無関係な事柄だからである。おそらく、日本語については、そうした主体を表す成分が他の成文とは異なる文法的扱いを受けているといえる根拠はみいだしえない、したがって日本語は「主語」とよびうる範疇の存在しない言語ということになるであろう。たとえば、主体を表す成分の文中における位置も他の成分と異なるとはいえず、文中にあってもなくてもよいという点でも、他の(述語を除く)成分と同様である。

 これに対して、たとえば英語には、「主語」という範疇(それをどう名づけようと)の存在を認めざるをえない。なぜなら、述語の表す属性や動作の主体を表す成分は、平叙文や疑問文では原則として文中に存在せざるをえず、またその文中の位置も原則として決まっている。このような特殊性は、そうした成分が属性や動作の主体を表しているということからは説明しきれないものである。主体を表しているからといって、なぜ文中に不可欠なのか、なぜ文中における位置が決まっていなければならないのか、どうにも説明しきれない。したがって、この成分のこうした特殊性は、英語の文法がそれに他の成分とは異なる位置づけを与えていることによると考える以外になく、そこに一つの範疇が文法的に存在すると考える以外にない。つまり、英語には「主語」が存在するわけである。「主語」という範疇の存在を考えるべき言語はかなりあり、すべて同じ特殊性を示すことによってその存在が証明されるわけではないが、そうした成分が主体を表すということだけからは説明しきれない特殊性を示す。また、「主語」の存在する言語においても、「主語」の表しうる内容の範囲は言語によって当然かなり異なる。

[湯川恭敏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「主語」の意味・わかりやすい解説

主語
しゅご
subject

文の述語が表わす動作や状態のにない手を示す部分の中心となる語。英語の文 Jack gives Jill flowers.では gives (与える) するのは Jackであるから,Jackがこの文の主語である。インド=ヨーロッパ語族に属する諸言語などでは,一般に主語の人称などで述語の中心になる定動詞の形が規定される (上の例文では Jack givesの gives) 。そのような言語では,主語は定動詞を規定するものとして文法的に定義される。の体系をもつ言語では,主語になっている名詞,代名詞の格を主格という。日本語では「~が」の形が主語とされるが,完全な文を形成するために必ずしも必要ではない点,文法的規定に欠ける点などで,インド=ヨーロッパ語族などにおける主語とは性格を異にするので,「~を」「~に」などと対等の連用修飾語であるとする説さえある。

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百科事典マイペディア 「主語」の意味・わかりやすい解説

主語【しゅご】

英文法などでは叙述の主題をなす部分をいうが,文法上の主語は名詞または名詞相当語句であり,述語動詞との間に人称・数の呼応がある。文法上の主語と意味上の主語とは異なる場合もある。日本語では主語の定義は一定していない。主題となる語は〈は〉〈が〉などの助詞を添えて表されるが,主語の認定には疑問が生じやすく,〈象は鼻が長い〉の主語は〈象は〉であるか〈鼻が〉であるかといった問題が論議される。また主語が表面に現れないこともあり,本質的には述語と対立するものでなく,述語にかかる連用修飾語の一種とする立場もある。
→関連項目再帰動詞

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世界大百科事典(旧版)内の主語の言及

【主語・述語】より

…文法や論理学の用語。その概略については,日本ではすでに小学校の国語教育で〈何が(は)どうする〉〈何が(は)どんなだ〉〈何が(は)何だ〉の〈何が(は)〉に当たるものを主語,〈どうする〉〈どんなだ〉〈何だ〉に当たるものを述語という,と教授するほどで,一般にも周知の用語である。だが,特に文法上の主語は,多少掘り下げて考えると,さほど明快な概念ではなく,特定の一言語についてさえ,研究者によってとらえ方に差があることが少なくない。…

【西洋哲学】より

…したがって,〈実体‐属性〉の関係は,アリストテレスにあっては〈ヒュポケイメノン‐シュンベベコスsymbebēkos(共に居合わせているもの=付帯的属性)〉の関係として考えられている。 その際注意さるべきことは,この〈ヒュポケイメノン〉がすべての〈シュンベベコス〉の担い手である〈基体〉を意味すると同時に,すべてがそれについて述定されるがそれ自身は他の何ものの述語にもならない命題の〈主語〉をも意味していることである。ということは,ここでは事物の存在構造が〈……は……である〉という述定的命題の構造をモデルにしてとらえられているということである。…

【態】より

…動詞にみられる文法範疇の一つで,主語(主語・述語)と動作の関係を示す。たとえば,英語のJohn kicked the dog.という文で〈kick〉という行為の主体であるJohnは主語としてあらわれており,その動作の及ぶ対象であるthe dogは目的語となっている。…

【日本語】より

…こうした敬語法は東洋のモンスーン地帯に発達していて,朝鮮を除く大陸の諸言語には見られない現象である。
[文法――統語面]
 いま主語subjectをS,目的語objectをO,動詞verbをVとして種々の言語の語順を示せば,例えばアラビア語は動詞が文頭に立つのでVSO型(例:taqru’u al‐bintu kitāban.〈読んでいる・少女が・本を〉)とされ,また例えば英語や中国語のように動詞が主語と目的語の間にくるものはSVO型(例:the girl・is reading・a book.〈少女が・読んでいる・本を〉),そして日本語は動詞が文末にくるのでSOV型に属する。SOV型言語は,日本語,朝鮮語,モンゴル諸語,チュルク諸語,ツングース諸語のように,北ユーラシアから日本列島へと分布している。…

【判断】より

…そして(1)の型の命題(判断)は肯定命題(肯定判断),(2)は否定命題(否定判断)と呼ばれる。(1)においてSは主語subject,Pは述語predicateと呼ばれ,〈is(である)〉は二つの名辞(概念)をつなぐものとして繫(けい)辞またはコプラcopulaと呼ばれている。さて,まず主語Sが個体のとき,(1),(2)は単称命題といわれる。…

※「主語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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