内科学 第10版 「くも状血管腫・手掌紅斑」の解説
くも状血管腫・手掌紅斑(症候学)
病態生理
肝硬変に伴う内分泌環境の異常,特にエストロゲンの代謝異常による貯留と関連して出現し,血管拡張の結果として発生する.ただし,血中エストラジオール濃度が高い人にみられるわけでなく,女性ホルモンと男性ホルモンの比率がより重要である.すなわち,エストラジオールの血中濃度が正常範囲でも,遊離テストステロンの血中濃度が低下している場合が多い.くも状血管腫が,特定の部位にのみ出現する機序は,完全には解明されていない.肝硬変のほかに,アルコール多飲者,ウイルス性肝炎でも一過性に現れ,また正常人,特に小児,妊婦,まれに慢性関節リウマチ患者でもみられる.
(2)手掌紅斑(palmar erythema)(図2-20-2)
病態生理
手掌紅斑の発現機序は,くも状血管腫と同様に考えられている.しかし,くも状血管腫と異なり足底部にも認められることがある( 足蹠紅斑).くも状血管腫,手掌紅斑は,アルコールを原因とする肝硬変に出現率が高い.これはアルコールによる酒渣の存在からもわかるように,アルコールによる血管拡張作用が,臨床症状を出現しやすくするものと考えられる.慢性肝炎や肝硬変などの肝疾患以外でも,妊婦,関節リウマチ,慢性熱性疾患,慢性白血病などにもみられることがある.鑑別診断 手掌紅斑,くも状血管腫,腹部膨隆などがみられる場合,肝臓病,特に肝硬変を考慮する.[向坂彰太郎・入江 真]
■文献
大東岳司,大槻 眞:消化器病診療. 良きインフォームド・コンセントに向けて(「消化器病診療」編集委員会編),pp7-9,医学書院,東京,2004.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報