日本大百科全書(ニッポニカ) 「エストラジオール」の意味・わかりやすい解説
エストラジオール
えすとらじおーる
estradiol
脊椎(せきつい)動物の雌の卵巣から分泌されるステロイドホルモンで、女性ホルモン(エストロゲン、卵胞ホルモン)の代表的なものである。その分泌量は月経周期に伴って変動を示し、妊婦では大量に分泌される。17α(アルファ)体および17β(ベータ)体の二つの異性体があるが、一般には17β-エストラジオールをさす。1935年アメリカの生化学者ドイジーがブタの卵巣から発見した。このほか胎盤、妊婦尿などから検出される。雌の生殖腺(せん)を発達させ、二次、三次性徴を表すが、とくに哺乳(ほにゅう)類では発情をおこさせる。一般に女性ホルモンとして発売されているものは17β-エストラジオール、またはこの誘導体であり、卵巣や子宮の発育不全をはじめ、更年期障害、月経不順、月経過多、無月経、月経痛、機能性不妊症、老年性腟(ちつ)炎などに用いられている。現在使用されている低用量経口避妊薬(低用量ピル)には、合成卵胞ホルモンであるエチニルエストラジオールとデソゲストレルなどの合成黄体ホルモンが配合されている。最近では、17β-エストラジオールは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防・治療にも用いられる。エストラジオールは、内分泌攪乱(かくらん)化学物質(いわゆる環境ホルモン)の一つであり、水環境や水生生物(魚類)から水質調査により微量検出されるとの報告がある。
[藤本善徳]