インフォームド・コンセント(読み)いんふぉーむどこんせんと(英語表記)informed consent

翻訳|informed consent

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

インフォームド・コンセント
いんふぉーむどこんせんと
informed consent

患者医師から治療法などを「十分に知らされたうえで同意」すること。医師側が患者の権利を無視して自分たちの都合だけで医療を行うことのないようにと、欧米では1960年代に確立した概念。日本では、1990年(平成2)に日本医師会生命倫理懇談会が「説明と同意についての報告」を出してから一般的に知られるようになった。欧米では、インフォームド・コンセントの内容は、病気の説明と各種の治療法、治る確率や治療の問題点、危険性などに及び、効果の確立していない実験的治療や臨床試験薬を使う場合にはとくに不可欠であるとされる。なにも治療をしない場合や他の病院での治療法とも比較して、患者に理解できる平易なことばで説明することになっている。

田辺 功]

『チャールズ・RK・ハインド編、岡安大仁監訳、高野和也訳『いかに「深刻な診断」を伝えるか――誠実なインフォームド・コンセントのために』(2000・人間と歴史社)』『宮本恒彦編著『実践インフォームドコンセント――患者にとってよりよい医療提供のために』(2003・永井書店)』『星野一正著『インフォームド・コンセント――患者が納得し同意する診療』(2003・丸善)』『前田正一編『インフォームド・コンセント――その理論と書式実例』(2005・医学書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

インフォームド・コンセント
informed consent

直訳すると「知らされた上での同意」。医師が患者に治療法の種類や長所短所などをすべて話した上で,患者の考えを反映させて医療の内容を決めていく方式臓器移植等の危険を伴う措置に先立って,また脳死状態になったときに生命維持装置をはずすか否か,といったケースでは,このインフォームド・コンセントが必要とされる。米英が発祥とされる。日本の医療は,医師が患者に一方的に「与える」あるいは「施す」ものであり,医療内容に関して患者が意見を述べるなどということは考えられなかった。だが,医療というものは本来,医師と患者の共同作業で進められていく性格のものである。 1990年1月の日本医師会の生命倫理懇談会がまとめた「説明と同意」の報告書では,医師が日常診療の場で,(1) 病名と病気の現状,(2) 行なおうとする治療の方法,(3) その治療方法の危険度,(4) 病気についての将来予測等を患者に説明し,同意を得るよう求めている。

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