クルド人問題（読み）クルドじんもんだい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

クルド人問題
クルドじんもんだい

イラン，イラク，トルコ，シリア，旧ソ連の国境山岳地帯，いわゆるクルディスターン地方に住むクルド人の民族的処遇をめぐる問題。約 1500万人以上と推定されるクルド人は独自の言語，文化をもつ民族 (大多数はスンニー派イスラム教徒) で，オスマン帝国解体後独立国家の樹立を求めたが認められず，上記各国に居住地を分断され，いずれの国においても少数民族と化した。北西イランのマハーバードでは 1946年にクルド人民共和国が樹立されたが，イラン軍によって解体された。イラクのクルド人は 20年代のイラク成立以来，自治を求める闘争を続けてきたが，イラク軍によってきびしく弾圧され，特にイラン・イラク戦争末期の 88年には化学兵器による攻撃を受け 18万人が殺された。湾岸戦争停戦後，再度反乱に立上がったクルド人をイラク軍は激しく攻撃，このため 25万人の難民が発生した。こうした難民の帰還を促すべく，国連安全保障理事会はイラク北部北緯 36度以北の地域をクルド人のための安全地帯と定め，これに基づき多国籍軍の空軍が監視している。クルド人組織のおもなものにはマスード・バルザーニの率いるクルド民主党 KDPと，ジャラール・タラバーニの率いるクルド愛国同盟 PUKがあり，勢力を二分している。イラクのクルド人問題は，この両者とイラク政府との自治交渉の行くえにかかっているが，他方，最も多くのクルド人が住むトルコでは独立を求めるクルド労働者党 PKKが国の内外で武力闘争を展開している。 99年2月，トルコ治安部隊は潜伏先のナイロビ (ケニア) でアブドラ・オジャラン PKK党首を逮捕し，その後裁判で死刑を宣告したが，欧州連合 EUは人権抑圧として批判，EU加盟を求めるトルコ政府は執行を見合せている。

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