クルマガイ(読み)くるまがい(英語表記)sun dial shell

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルマガイ」の意味・わかりやすい解説

クルマガイ
くるまがい / 車貝
sun dial shell
[学] Architectonica trochlearis

軟体動物門腹足綱クルマガイ科の巻き貝。房総半島以南の西太平洋、インド洋水深30~60メートルの細砂底にすむ。低い円錐(えんすい)形で、殻高30ミリメートル、殻径63ミリメートルに達し、車輪を連想させる。ラテン語の学名は「滑車」の意味である。胎殻は左巻きで殻頂の中に埋もれていて、後生殻は右巻きであり、10回以上巻く。殻底は平らで、臍孔(へそあな)は広いため、その臍孔から殻頂を見ることができる。縫合の下と周縁近くに深い螺(ら)状溝を巡らし、その間は滑らかで、弱い成長線がある。黄褐色の地に、縫合下と周縁に断続する黒褐色帯がある。この科に属する種は日本でおよそ30種あり、いずれもスナギンチャク類や近縁腔腸(こうちょう)動物を食べ、それらの群体の上で寄生的な生活を送る。

[奥谷喬司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クルマガイ」の意味・わかりやすい解説

クルマガイ
Architectonica trochlearis; sundial shell

軟体動物門腹足綱クルマガイ科。殻高 3cm,殻径 6cm。殻は低い円錐形で,螺層は 10階。殻底は平らで広く,また臍孔も広くて大きく,殻頂のほうまで螺層が見える。殻の縫合と周縁とに黒色斑列があり,これが車を思わせるのでその名がある。黒色斑列の上には深くて広い溝があるのが特徴。普段は体の中に収められている吻を伸長させてイソギンチャク類を食べる。房総半島以南熱帯太平洋,インド洋まで広く分布し,水深 200m以浅の浅海の砂底にすむ。近縁種のクロスジグルマ A. perspectivaは,殻の色がやや明るく,周縁の色帯の上の溝が狭いことで区別される。クルマガイ類はすべて長い浮遊幼生期をもつため,一般に地理的分布が著しく広い。

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