ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレメンス1世」の意味・わかりやすい解説
クレメンス1世
クレメンスいっせい
Clemens I
[没]101頃
ローマ出身の教皇 (在位 88~97または 92~101) ,聖人。「ローマのクレメンス」と同一人物と考えられている。使徒ペテロの直弟子とされ,また『ピリピ人への手紙』4章3のクレメンスと同一人物とされるが,否定する意見もある。『クレメンスの第1の手紙』の作者と認められており,この書簡は,なかに記述された事件から 96年頃に書かれたものであり,七十人訳聖書の引用により,筆者のユダヤ・ヘレニズム的文化環境がうかがわれる。それは古代シリアやエジプトで新約聖書と等しく読まれた。その他多くのクレメンスの手紙といわれるものが伝えられていることは,初期教会における彼の評価が高かったことを物語っている。殉教の事実は確認されていないが,4世紀頃書かれた『クレメンス殉教録』 Martyrium St. Clementisの,錨を首につけて海に投じられたという伝説により,絵画では錨とともに教皇として描かれる。石工の保護聖人。祝日 11月 23日。
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