グリセリン酸(読み)グリセリンサン

化学辞典 第2版 「グリセリン酸」の解説

グリセリン酸
グリセリンサン
glyceric acid

2,3-dihydroxypropionic acid.C3H6O4(106.08).HOH2CCH(OH)-COOH.グリセリンの亜硝酸酸化,2,3-ジブロモプロピオン酸の加水分解などで合成される.DL-グリセリン酸はシロップ状.Ka 2.8×10-4(25 ℃).水,エタノールに易溶,エーテルに不溶.長く放置すると縮合重合体(分解点250 ℃)になる.D-グリセリン酸はD-グリセルアルデヒドの酸化により,L-グリセリン酸はDL-グリセリン酸をPenicilliaAspergilliなどの微生物で処理して得られる.前者旋光度は左旋性であるがカルシウム塩[Ca(C3H5O4)2・2H2O]は+14.5°(水).グリセリン酸のリン酸エステルは糖代謝の重要な中間体である.[CAS 473-81-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリセリン酸」の意味・わかりやすい解説

グリセリン酸
ぐりせりんさん
glyceric acid

ヒドロキシカルボン酸の一つ。2,3-ジヒドロキシプロピオン酸の別名。不斉(ふせい)炭素原子をもっているので、光学異性体のD体、L体およびラセミ体DL体)が存在する。ラセミ体のグリセリン酸はグリセリンを希硝酸により酸化すると得られる。いずれの光学異性体も、無色の粘性が大きいシロップ状の液体で固化せず、また蒸留すると分解する。化学式HOCH2CH(OH)COOH、分子量106.1。水、エタノール(エチルアルコール)、アセトンに溶けるが、エーテル、ベンゼンには溶けない。D体の水溶液は右旋性、L体の水溶液は左旋性を示すが、金属塩とすると旋光性の向きが逆になる。グリセリン酸のリン酸エステルは糖代謝の重要な中間体である。

[廣田 穰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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