日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケット語」の意味・わかりやすい解説
ケット語
けっとご
Кет/Ket
ロシア連邦、エニセイ川の中流のトルハンスクとその支流ポドカメンナヤ・ツングースカ川のバイキート付近に住むケット人の言語。旧称をエニセイ・オスチャーク語といった。人口は約1000人で、イムバット方言とシム方言に分かれる。名詞には男性、女性、物性の別があり、単数と複数で、男性と女性は5格に、物性は7格に変化する。女性単数主格am「母が」、向格am-diŋa「母へ」、離格am-dil′「母から」、所格am-diŋt′「母のもとに」、共格am-aś「母と」。動詞は接頭辞や挿入辞により活用する。usqit「なぐさめる」の変化形d-usqi-r-it「彼が私をなぐさめる」では、d-が主語の接頭辞、-r-が目的の挿入辞である。この言語の系統は謎(なぞ)に包まれている。
[小泉 保]