コチニールカイガラムシ(その他表記)cochineal insect
Dactylopius coccus

改訂新版 世界大百科事典 「コチニールカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説

コチニールカイガラムシ
cochineal insect
Dactylopius coccus

半翅目コチニールカイガラムシ科の昆虫。虫体からコチニール(洋紅染料)が得られるのでこの名がある。また,その色からエンジムシ臙脂虫)とも呼ばれる。中南米に産し,日本には分布しない。雌成虫は広楕円形,成熟すると体長5mmほどになる。虫体は白色の蠟質分泌物で覆われ,外観的にはコナカイガラムシに似る。ウチワサボテンOpuntiaのサボテンに寄生し,終生,脚を有するが,ほとんど移動することはない。しばしば群生し,綿塊状の分泌物に埋もれて繁殖する。コチニールは古くから食紅や口紅の原料とされたほか,各種織物の染料に用いられ,アニリン染料が合成されるまでは退色しない赤や紫の重要な色源として,メキシコを中心に大量に養殖,生産が行われた。カイガラムシから得られる染料としては,ほかにタマカイガラムシの1種から得られるカーミーズケルメス)と呼ばれる赤色染料がある。
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百科事典マイペディア 「コチニールカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説

コチニールカイガラムシ

半翅(はんし)目マルカイガラムシ科の昆虫の1種。雌は卵円形,体長2mm内外,無翅,血赤色,白蝋物質でおおわれる。雄は細長く,有翅。エンジムシともいう。サボテンに寄生し,中南米に分布。かつて本種の雌から赤色色素のカルミンコチニール)を採取した。
→関連項目カイガラムシ

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世界大百科事典(旧版)内のコチニールカイガラムシの言及

【臙脂】より

…樹枝に寄生した雌のラックカイガラムシの分泌物が染料に利用されたのである。ラックカイガラムシは古代インドでもラックダイという染料として用いられたが,このほかサボテンに寄生するコチニールカイガラムシすなわちエンジムシ(臙脂虫)から得られたコチニールは,古代インカなど中南米で使用された。古代フェニキアのケルメス,ヨーロッパでカーミンと呼ばれるものはタマカイガラムシの一種から得られた染料だと思われる。…

【カイガラムシ(介殻虫)】より

…ラックカイガラムシLaccifer laccaの分泌物を精製して得られるシェラックは,塗料,接着剤,電気絶縁材,レコード盤などきわめて広い用途をもち,インドや東南アジア諸国で養殖されたものが大量に輸入されていた。また,メキシコ産のコチニールカイガラムシの虫体から得られるえんじ色の色素は,食紅や各種染料として用いられ,現在もわずかながら養殖が行われている。【河合 省三】。…

【害虫】より

…また有用昆虫などで,その需要の変遷によってその評価が変わる例もある。例えばラックカイガラムシやコチニールカイガラムシは,ラッカーや染材原料をとる有用虫として利用することがなくなったところでは,一般害虫とされるようになり,アイが染料用に栽培されたころは,その葉を食べるものは害虫であったが,栽培せず雑草化したときには雑草防除に役だつ益虫とされるようにもなった。要するに害虫とか益虫というのは,あくまでも人と虫との相対的な関係からの呼名である。…

※「コチニールカイガラムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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