日本大百科全書(ニッポニカ) 「こびとの贈り物」の意味・わかりやすい解説
こびとの贈り物
こびとのおくりもの
Die Geschenke des kleinen Volkes
『グリム童話集』(第182番)の話。旅の仕立屋と金細工師が、月夜に楽の音を聞き、行ってみると丘の上で小人の男女が踊っている。中央にいる大きな老人に促されて、2人も踊ると、老人は2人を捕らえて髪の毛とひげをそり落とし、石炭を持って行けと合図する。2人がそれをポケットに詰めて帰ると、翌朝には純金になっている。背中にこぶのある金細工師は次の晩にも、小人のところへ行って踊る。石炭を袋に詰めて戻るが、翌朝になっても石炭のままで、前日の純金も石炭になっている。気がつくと背中のこぶと同じものが胸にもついており、一生仕立屋の世話になって暮らす。グリム兄弟がある伝説集から採用したものである。全ヨーロッパのみならず、トルコ、モンゴルにも分布しており、日本の『こぶ取り爺(じじい)』もその一環と考えられる。
[小澤俊夫]
『高橋健二訳『グリム童話全集3』(1976・小学館)』