ポケット(読み)ぽけっと(英語表記)pocket

翻訳|pocket

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポケット」の意味・わかりやすい解説

ポケット
ぽけっと
pocket

お金や小物を入れて持ち歩くための小袋。また、衣服外側内側に取り付けられた、上方や脇(わき)に口のある小袋のこと。衣服にポケットが取り付けられたのは16世紀からで、それ以前は、お金、鍵(かぎ)、小間物などは布でくるみ、胸元、フードの角、袖口(そでぐち)などに挟んでいた。この布がやがて巾着(きんちゃく)形の袋となり、腰の飾り帯からつるされ、中世には男女ともに用いられた。16世紀には実用的なものもできたが、ロココ風の膨らみの大きいスカートの流行のため、ポケットがその中につくられたので、小袋は姿を消した。しかし、フランス革命後にスカートの膨らみが小さくなると、ふたたび小袋が用いられ、以後不可欠なものとなって今日に至った。

 一方、いわゆるポケットが現れたのは16世紀後半で、装飾的な懐中時計を入れるために、当時の男子の下衣であるオードショスに脇ポケットがつけられた。その後、丈長の上着ジュストコールやアビ・ア・ラ・フランセーズ、そしてベストやジレにも今日みられるような雨蓋(あまぶた)付き、あるいは切り込みポケットが両脇につけられた。それに倣い、1870年ごろから普及し始めた婦人用スーツにも、同様なポケットがつけられたのである。今日ポケットは、実用と装飾を兼ねたデザインの一要素にもなって、多くの衣服に取り付けられている。

 ポケットの種類にはいろいろある。衣服の外側につけるものはアウトサイド・ポケット、内側につけるものはインサイド・ポケット、衣服に布を外側から縫い付けるものはパッチ・ポケット、衣服に切り込みを入れて内側に袋をはめ込むものをセットイン、あるいはカットイン・ポケット、雨蓋付きのフラップ・ポケット、玉縁仕上げの両玉縁ポケットと片玉縁ポケット、縫い目を利用してポケット口にしたシーム・ポケット、上着の両脇にあるサイド・ポケット、ポケット口に長方形の布を取り付けた箱ポケット(ウエルト・ポケット)、飾りだけで見せかけのフォールス・ポケット、袋の底がなく筒抜けの貫通ポケット、ズボンの脇線にあるトラウザーズ・ポケット、襠(まち)の入ったアコーディオン・ポケットなどである。

[田村芳子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポケット」の意味・わかりやすい解説

ポケット
pocket

上方から投入し,下方から取出すように造られている鉱石,石炭などの貯蔵設備。鉱山,炭鉱においては,分散しているいくつかの切羽からの出鉱 (炭) を1ヵ所に集約したり,一般には時間的変動の多い切羽からの出鉱 (炭) を調節したりして運搬する場合,運搬系統の中間施設としてポケットが設けられる。具体的には竪坑底のスキップ積込口,竪坑以外の主要運搬坑道の積込口などにしばしば設置されるほか,坑外の貯鉱 (炭) 場,特に炭鉱で盤圧の強い沿層採炭坑道と盤下運搬坑道との中間などにもみられる。

ポケット
pocket

衣服につける物入れのこと。衣服の外側や内側,あるいは両側につけ,手回り品を入れるもので,労働着,家庭着,子供服には必要上つけられ,外出着には装飾を兼ねてつけられる。おもな種類は,玉縁 (たまぶち) ポケット,箱ポケット,フラップポケット,隠しポケット,脇ポケット,ヒップポケット,胸ポケット,装飾用のシャムポケット (見せかけの意) などで,構造上は,衣服の表に切込みを入れる切りポケットと,表に張りつける張りポケットに大別される。

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