日本大百科全書(ニッポニカ) 「コビトハダカ」の意味・わかりやすい解説
コビトハダカ
こびとはだか / 小人裸
dwarf lanternfish
[学] Diaphus fulgens
硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。駿河(するが)湾、八丈島、紀伊半島沖の太平洋、対馬(つしま)海域、台湾、フィリピン、ジャワ島など西太平洋、中部太平洋に分布する。体高はすこし高く、体長の4分の1よりやや低い。頭長は体高より長い。吻(ふん)は丸く、短い。目は吻端近くにあり、比較的小さく、眼径は頭長のおよそ3分の1。背びれの起部は腹びれ基底（付け根の部分）の上方から、臀(しり)びれ起部は背びれ基底後端よりもすこし後方から始まる。背びれは13～15軟条、臀びれは12～13軟条、胸びれは9～10軟条、腹びれは8軟条。側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は33～34枚。鰓耙(さいは)は上枝に5～6本、下枝に13～15本。
また、発光器は種の重要な特徴である。本種はすべての発光器が小さい。眼前上部発光器Ant（図中③、以下同）と眼上発光器Suo（④）はない。鼻部背側発光器Dn（①）は小さく円形、鼻部腹側発光器Vn（②）は楕円(だえん)形で、目の前縁下部にあり、両発光器は広く離れている。眼下発光器So（⑤）は瞳孔(どうこう)の後縁下よりやや前にある。尾びれ前発光器Prc（⑱）は4個で、最上のものは発光器の直径1個分、側線より下に位置する。胸びれ上発光器PLO（⑦）は胸びれ基底上端と側線のほとんど中間にあり、大きい発光鱗をもつ。肛門(こうもん)上発光器SAO（⑫）は3個で、ほぼ斜め直線状に並び、最上のものは体側後部発光器Pol（⑭）とともに、発光器の直径1個分、側線より下にある。胸びれ下発光器PVO（⑧）は2個で、上のものは胸びれ基底上端よりも下にある。腹びれ上発光器VLO（⑨）は側線と腹びれ基底の中間にある。前部臀びれ発光器AOa（⑬）は5～6個で、1番目と最後のものは高位にある。後部臀びれ発光器AOp（⑮）は5～6個で、体の腹縁に沿って並ぶ。1番目と2番目の前部臀びれ発光器を結ぶ線は斜め前上方へ向かい、その延長線は上と中の肛門上発光器の間を通る。尾柄(びへい)には発光腺(せん)がない。
最大体長は4センチメートルほどにしかならない小形種。沖合いの水深2000メートル以浅にすみ、夜間に水深85メートルほどまで日周鉛直移動をする。中層引網(ひきあみ)でとれる。
オトメハダカD. mollisやニラミハダカD. aliciaeに似るが、これら両種は胸びれ上発光器の発光鱗が小さいこと、後部臀びれ発光器が3～4個であることなどで本種と区別できる。
［尼岡邦夫 2024年11月18日］
