日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
コミュニティ・デベロップメント
こみゅにてぃでべろっぷめんと
community development
発展途上国の農村地域社会における生活向上のための計画と方法およびそれによる活動をさす。第二次世界大戦後国連が提唱して国際的に普及するようになった。向上を図るにあたり、上からの一方的援助はまったく考えられていない。むしろ農民の側から主導性、自助努力、相互扶助のおこることを期待し、それを政府の進める全国的経済・社会・文化条件改善計画と結合させようとするものである。
発展途上国では長期に及んだ植民地支配の結果、農民は無気力に陥っており、したがって彼らの間に向上意欲と自助努力が生まれない限り生活条件改善の見込みはたたず、ひいては国民生活向上への重大な障害になると認識されていた。そのためこの計画では農民自体の努力を重視し、政府の役割は、地域社会に関しては自助と向上への意欲の喚起、いったん喚起されてからは必要に応じて提供される技術的援助にとどめ、あとは個々の地域社会で推進される活動と全国的計画との調整にあるとされている。ところで発展途上国では、農村地域と並んで、都市にあってもそこに数多く出現しているスラム地域では生活条件が劣悪を極め、深刻な都市問題となっている。そのため、この計画は都市のこれらの地域にも導入されるに至ったが、さらに最近では先進国に関しても、地域住民が自主的連帯性に基づいて環境改善に取り組むような場合について、このことばが用いられるようになっている。
[中村八朗]