日本大百科全書(ニッポニカ) 「こんにゃく問答」の意味・わかりやすい解説
こんにゃく問答
こんにゃくもんどう
落語。江戸で食い詰めた八五郎がこんにゃく屋六兵衛の世話で田舎(いなか)の空(あき)寺の和尚(おしょう)になり、酒ばかり飲んでいる。ある日、永平寺の托善(たくぜん)という雲水(うんすい)が禅問答を申し込む。困っているところへ六兵衛がきて問答を引き受ける。翌日、托善の問いに大和尚に化けた六兵衛は黙っている。無言の行(ぎょう)と察した托善が手で小さい円形を示すと、六兵衛は両手で大きな輪を示す。托善が10本の指を突き出すと、六兵衛は5本の指を出す。托善が指を3本出すと、六兵衛は右の人差し指を目の下に当てる。逃げる托善に八五郎が事情を聞くと、「大和尚の胸中は大海のごとし。十方世界は五戒で保つ。三尊の弥陀(みだ)は目の下にあり」とはまことに恐れ入ったことという。六兵衛は「あいつは俺(おれ)の商売を知ってやがって、お前んとこのこんにゃくは小さいだろうといったから大きいぞ、十(とお)でいくらかというので五百といったら、三百にまけろというので赤んべえ」。2代目林屋正蔵の作といわれる。仏教語を駆使した名作で、サゲ(落ち)も「見立て落ち」とよばれる傑出したもの。
[関山和夫]