和尚(読み)オショウ

デジタル大辞泉 「和尚」の意味・読み・例文・類語

おしょう〔ヲシヤウ〕【和尚】

《〈梵〉upādhyāyaの俗語khoshaの音写。師の意》
を授ける師の僧。また、修行を積んだ僧の敬称
僧位の一、法眼ほうげんのこと。
寺の住職。また、僧侶のこと。「山寺和尚さん」

技芸に秀でた者。武道茶道師匠など。
㋑江戸初期、上位の遊女
[補説]禅宗浄土宗では「おしょう」、天台宗華厳宗では「かしょう」、真言宗法相宗律宗浄土真宗では「わじょう」といい、律宗浄土真宗では「和上」と書く。
[類語]上人大師阿闍梨三蔵猊下僧侶坊主坊さん御坊お寺様僧家沙門法師出家比丘僧徒桑門住職住持方丈入道雲水旅僧

か‐しょう〔クワシヤウ〕【和尚】

天台宗などで、戒を授ける僧。また、高僧の敬称。
僧侶。→和尚おしょう

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精選版 日本国語大辞典 「和尚」の意味・読み・例文・類語

お‐しょうヲシャウ【和尚・和上】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] upādhyāya から変化した中央アジア方面における俗語 khosha (「師」の意)を中国語において音訳したものという。親教師、依学などと意訳 ) 仏語。
  2. 受戒の人の師表となる僧。師僧。→戒和尚(かいわじょう)
    1. [初出の実例]「和尚阿闍梨まさに受者ををしへて」(出典:正法眼蔵(1231‐53)受戒)
  3. 僧位の称。大和尚位、法印和尚位、法眼和尚位などがあり、それぞれ略して和尚と呼ぶことがあったが、法眼(ほうげん)を指す場合が多い。
  4. 禅宗、浄土宗などで修行を積んだ高僧を敬っていう。
    1. [初出の実例]「唐僧を召されければ、御前へ参りて、『和尚、和尚』礼す」(出典:平治物語(1220頃か)上)
    2. [その他の文献]〔百一羯磨‐一〕
  5. 剃髪(ていはつ)した者の総称。
    1. (イ) 僧侶一般をさす。普通は住職以上に対して用いる。
      1. [初出の実例]「乗物で和尚は礼にあるかるる〈洒堂〉 たてこめてある道の大日〈芭蕉〉」(出典:俳諧・深川(1693))
    2. (ロ) 盲人の按摩。座頭。
      1. [初出の実例]「坐頭(ざとう)はだれでも和尚(オセウ)和尚(オセウ)と一ときはよく会釈(あしろふ)て」(出典:洒落本・間似合早粋(1769)早粋の辞)
    3. (ハ) 医者や幇間など。
      1. [初出の実例]「おしゃうさきへはいらっせへ」(出典:洒落本・通言総籬(1787)一)
  6. その道ですぐれた人、一芸にひいでた人をいう。
    1. (イ) 武芸や茶道の師匠。達人。名人。
      1. [初出の実例]「茶礼は、禅家隠遁の体を模し、質素閑静を学びたるもの也。よって宗匠たる人を、和尚(オシャウ)といふなり」(出典:随筆・本朝世事談綺(1733)一)
      2. 「剣術の師を和尚と云事〈略〉傾城にも和尚あり。ただすぐれたるをいふ俗語なり。そはむかし禅宗行はれてより俗人好みて仏家の語を用ひしが、今に残れる事いと多し」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)四)
    2. (ロ) 江戸時代初期の高級な遊女。遊女歌舞伎を演じた遊女をさすことが多い。
      1. [初出の実例]「おそしと待所に、をしゃう先立てまく打上はしがかりに出るを見れば」(出典:慶長見聞集(1614)五)
    3. (ハ) 転じて、芸達者な若女方の役者。
      1. [初出の実例]「松本小源次とて四人ともに若女、ぬれしな物の、おしゃうなり」(出典:仮名草子・元の木阿彌(1680)上)

和尚の補助注記

禅宗・浄土宗ではオショウ、天台宗ではカショウ、真宗ではワショウ、また、ワジョウ、真言宗・法相宗・律宗ではワジョウという。


わ‐じょう‥ジャウ【和尚・和上】

  1. 〘 名詞 〙 ( 律宗、法相宗、真言宗などでいうもの。→「おしょう(和尚)」の補注 )
  2. 多くの僧の師である僧。また、授戒の時に師となる僧。師僧。
    1. [初出の実例]「是の日、三綱、律師、及四寺の和上(ワシャウ)、知事、并に師位(のりのくらい)現有(いまあ)る僧等(ほうしとも)に、御衣、御被各一具(よそひ)を施す」(出典:日本書紀(720)天武朱鳥元年六月(北野本南北朝期訓))
  3. 修行を積んだ高徳の僧。また、僧を尊敬していう語。
    1. [初出の実例]「鑒真和上、凌滄海而遙来」(出典:正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳)
  4. 僧。坊主(ぼうず)。わじょ。
    1. [初出の実例]「引よたまくら、きまくらにもおとるよ手枕、たかをのわじゃうの」(出典:歌謡・閑吟集(1518))

か‐しょうクヮシャウ【和尚・和上】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「か」は「和」の漢音。天台宗で用いる読みかた。→「おしょう(和尚)」の補注 ) 仏語。
  2. 修行を積んだ高僧を敬っていう。戒を授ける僧。師僧。→戒和尚(かいわじょう)。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「教代和尚(クヮしゃう)百六十年行て」(出典:西源院本太平記(14C後)一五)
  3. 僧位の称。大和尚位、法印和尚位など。
    1. [初出の実例]「天台本師伝燈大法師位最澄 右可法印大和尚位伝教大師」(出典:贈位謚号勅書(866))
  4. 僧侶一般をさす。普通は住職以上にいう。
    1. [初出の実例]「まきのをのたらんくゎしゃうと申が、〈略〉七日のせつぽうをおのべある」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)

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改訂新版 世界大百科事典 「和尚」の意味・わかりやすい解説

和尚 (おしょう)

〈かしょう〉〈わじょう〉とも読む。和上,和闍,和社などの文字も当てられ,親教師,依学(えがく)などと訳されている。西域語の訛音で,《百一羯磨》に〈鄥波駄耶(サンスクリットupādhyāya)を親教師,和上と云うは即ち是れ西方時俗の語〉と指摘している。亀茲語のpwajjhawが和上の音写に近いといわれている。弟子のために親しく指導教授する意味から,その師匠を尊敬して和上,和尚と呼ぶに至った。ことに受戒の戒和上(尚)は有名である。日本では686年(朱鳥1)6月に飛鳥寺など4ヵ寺の和上が衣服など賜ったことを初見として,700年(文武4)3月の道照伝(《続日本紀》)に道照に対して和尚,和上と併用し,749年(天平勝宝1)3月の行基舎利瓶記には行基を和上と呼び,754年の書状で鑑真は東大寺良弁(ろうべん)を僧都和上と呼んでいる(《正倉院文書》)。有名な唐僧鑑真は戒律の師範であったために和上,大和上と称せられた。良弁の僧都和上や鑑真の大和上は尊称といえる。864年(貞観6)に制定された僧綱の上階である法印大和尚位,法眼和尚位の中には,和尚の尊称がとり入れられた。以後和上,和尚は高僧の尊称として用いられてきた。南都諸宗ではもっぱら和上(わじよう),天台宗では和尚(かしよう),他の諸宗では和尚(おしよう)と読んでいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和尚」の意味・わかりやすい解説

和尚
おしょう

仏教で、弟子を教育する師匠をいう。サンスクリット語ウパードヤーヤupādhyāyaの訛(なま)った音を写したもの。禅宗、浄土宗では「おしょう」とよぶが、法相(ほっそう)宗、真言宗、律宗などでは「わじょう」、天台宗では「かしょう」ともいう。和上(わじょう)とも書く。阿闍梨(あじゃり)(師)と弟子が教師と学生の関係にあるのに対し、和尚と弟子との関係は親子の間柄にある。和尚は弟子に戒(かい)を授けて僧とし、これを教育して一人前の僧にしてやる人であり、戒和尚ともいう。日本では僧侶(そうりょ)の官名の一つとなり、奈良時代に鑑真(がんじん)は大和尚(だいわじょう)に任ぜられている。中世以降は、高徳の僧を和尚といい、住職以上の僧をもこの称でよんだほか、単なる敬称としても用いられる。

[平川 彰]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「和尚」の解説

和尚
おしょう

和上(わじょう)とも。仏法の師・受戒の師のことで,高徳の僧の尊称。禅宗・浄土宗では「おしょう」,華厳宗・天台宗では「かしょう」,法相宗・真言宗では「わじょう」,律宗では「和上(わじょう)」と伝統的に呼称する。日本における僧侶の官位としては758年(天平宝字2)鑑真(がんじん)に授けられた大和尚位を最初とし,864年(貞観6)僧綱(そうごう)として法眼和尚位,法印大和尚位が定められた。しだいに修行を積んだ高徳の僧侶をさすようになり,転じて住職など僧侶一般の通称となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和尚」の意味・わかりやすい解説

和尚
おしょう
upādhyāya

う波駄耶 (うばだや) と音写される。もとインドで授戒のときに戒を授ける師を戒和尚といった。日本では中古以来,高僧の尊称で,天台宗では「かしょう」と呼び,禅宗,浄土宗では「おしょう」,法相宗,真言宗,律宗などでは,「わじょう」と呼ぶならわしである。ただし律宗では和上 (わじょう) と書く。

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百科事典マイペディア 「和尚」の意味・わかりやすい解説

和尚【おしょう】

仏教で受戒の時の師。親教師とも。日本では勅任の僧位,転じて高僧や僧の尊称。和上,和闍,和社などとも書かれ,呼び方もいろいろで,天台宗はかしょう,禅・浄土宗はおしょう,法相・真言宗はわじょう。律宗では和上(わじょう)という。

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普及版 字通 「和尚」の読み・字形・画数・意味

【和尚】かしよう・おしよう

僧、上人。

字通「和」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の和尚の言及

【和尚】より

…亀茲語のpwajjhawが和上の音写に近いといわれている。弟子のために親しく指導教授する意味から,その師匠を尊敬して和上,和尚と呼ぶに至った。ことに受戒の戒和上(尚)は有名である。…

【僧】より

…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…

【和尚】より

…亀茲語のpwajjhawが和上の音写に近いといわれている。弟子のために親しく指導教授する意味から,その師匠を尊敬して和上,和尚と呼ぶに至った。ことに受戒の戒和上(尚)は有名である。…

【住職】より

…住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。南都系や平安仏教系寺院では寺主(じしゆ),維那(いな),院家(いんけ),隠元(いんげん),浄土真宗や日蓮宗(法華宗)や時宗では上人(しようにん),禅宗では方丈,和尚,住持,長老(ちようろう)などの,住職をさす尊称がそれである。また,由緒ある大寺院ではその寺固有の歴史的呼称もある。…

【僧】より

…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…

※「和尚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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