さそり(蠍)座X-1(読み)さそりざエックスワン(英語表記)Scorpius X-1

改訂新版 世界大百科事典 「さそり(蠍)座X-1」の意味・わかりやすい解説

さそり(蠍)座X-1 (さそりざエックスワン)
Scorpius X-1

さそり座にある全天でもっとも明るいX線星。略号Sco X-1。1962年に観測ロケットによって予想を4桁も上回る強い天体X線が発見された。当初観測分解能が悪く,これが銀河中心を含む数十度の範囲に広がっているように見えたものである。その後まもなく,この天体X線のほとんどは銀河中心から銀河座標で北のほうに25°ほどの方向からくることが明らかになり,それがさそり座にあることからさそり座X-1と命名された。

 64年にはロケットに搭載されたすだれコリメーターの観測によって,これが0.1°よりは小さな広がりの星状の天体であることが明らかになった。66年には精密なすだれコリメーターによってその広がりは10秒角より小さい星状の天体であることがわかり,天空上の位置がほぼ1分角の精度で決定された。星状の天体であることとそのX線スペクトルの形とから,これが107~108Kの高温の火の玉で12~13等級の明るさの青い光の天体が予想された。東京天文台岡山天体物理観測所はこれが通常の星よりはきわだって“青く”紫外線過剰と予想されることから,二通りのフィルターを使った二重写法によって66年6月“さそり”の左のはさみのひじのところにヘリウムHeの輝線スペクトルをもつ異常に青い12.4等の天体を発見した。これが光る天体と同定されたX線星の第1号となった。以後X線天文学は光学観測の助けを得て急速に進歩し,今日では数千個に及ぶX線星が光る天体に同定されている。

 Sco X-1は連星を形成する星のほうはV818 Scoと呼ばれ暗い星であるが,0.79日周期で変光している。X線,光ともに広い時間の範囲で(1秒程度以下まで)変動している。ときおりX線のフレアが起きることがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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