日本大百科全書(ニッポニカ) 「さそり座」の意味・わかりやすい解説
さそり座
さそりざ / 蠍座
夏の宵の南の空低くに見える星座。真紅の1等星アンタレスを中心に十数個の明るい星がS字形の曲線を描き、東側の半身を濃い夏の天の川の中に横たえている。昔から黄道十二星座の第8星座(天蝎宮(てんかつきゅう))として重要視されてきた。全天有数の形の美しい星座で、かつては西隣のてんびん座もサソリのはさみの部分に含まれていた。ギリシア神話では、狩人(かりゅうど)オリオンが「この世に自分ほどの強者はいない」と豪語したため、女神ヘラがこの毒サソリを放ってオリオンを刺し殺させたという。このため、オリオンは星座になってからもさそり座を恐れ、さそり座が地平線上に見えている間はけっして姿を見せないという。これは、さそり座とオリオン座が天球上180度離れており、同時に夜空に現れないことを巧みに神話に結び付けたものである。もっとも目をひく星は、赤色超巨星として知られる1等星アンタレスである。太陽の直径の230倍もの大きさがあり、黄道に近く、しばしば赤い惑星の火星と並び、赤さを競い合うように見えるところから、「火星アレスの敵」という意味でこの名がつけられた。球状星団M4、散開星団M6、M7など双眼鏡でも楽しめる明るい天体を数多く含んでいる。
[藤井 旭]
『藤井旭著『藤井旭の星座ガイド「夏」』(1988・誠文堂新光社)』▽『瀬川昌男著『星座博物館「夏」』(1988・ぎょうせい)』▽『藤井旭著『夏の星座と星ものがたり――夏の星座と神話を楽しもう』(1993・誠文堂新光社)』▽『えびなみつる著『はじめての星座案内――見ながら楽しむ星空の物語』(2001・誠文堂新光社)』▽『藤井旭著『星座大全――夏の星座』(2003・作品社)』