改訂新版 世界大百科事典 「サットンフー」の意味・わかりやすい解説
サットン・フー
Sutton Hoo
イギリス,サフォーク州にある7世紀の墓地。ウッドブリッジの対岸にあり,1938,39年の発掘で,イースト・アングリア王の船墓から,イギリスで最も豊富な遺物を出土し,アングロ・サクソン時代の研究に欠くべからざる資料を提供した著名な遺跡である。60年代にも発掘が行われ,出土品の詳細な研究にも多大の努力が絶えず払われている。十数基の塚があり,その最大のものに長さ27m,38人漕ぎの船が埋葬されていた。中央の船室部から王家の象徴と考えられる旗章と砥石形の王笏(おうしやく)をはじめ,スウェーデン製の冑と盾,鎖帷子(かたびら),剣,槍,ナイフ,斧,金製鉸具(かこ),がまぐち,メロビング王朝の金貨,東ローマ帝国製の銀皿とコプト製の銅鉢を含む容器類,楽器などが出土したが,遺骸の埋葬は認められなかった。広範囲に海外との交渉をもち,豪華な宮廷の営まれていたことが知られ,キリスト教と関係の深い遺物もあり,埋葬の状況や一部の副葬品は《ベーオウルフ》の記述によく合う。624年か625年に死んだレドワルドReadwald王の記念塚と考える説が有力である。
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報