1999年に登録されたフランスの世界遺産(文化遺産)で、ボルドー地方の東部、ドルドーニュ川右岸のなだらかな丘陵地帯に広がる町。ワインの生産地として知られ、広大なぶどう畑には歴史の香りが漂う建造物が点在している。ワインの製造は古代ローマ帝国の属州だった頃から行われてきたが、本格化したのは12世紀半ば、サン・テミリオンを含むアキテーヌ公国がイングランド王領となり、この地方の中心都市であったボルドーにワインの輸出特権が与えられたからである。そのため生産量は飛躍的に増え、14世紀には最盛期を迎えることになる。町の名前は8世紀半ば、この地に洞窟を掘って隠遁生活を送った聖エミリオンに由来し、洞窟や弟子たちが建てた聖堂も残されている。800年にわたるワイン生産の歴史を刻んだ場所として評価され、世界遺産に登録された。◇英名はJurisdiction of Saint-Emilion