改訂新版 世界大百科事典 「サントリニ島」の意味・わかりやすい解説
サントリニ[島]
Santoríni
ギリシアのエーゲ海にあるキクラデス諸島の火山島。現代ギリシア語の別名はティラThíra,古代名はテラThēra。面積約75km2,人口約1万。独特なワインの産地として知られる。ティラ,ティラシア,アスプロニシの3島が外輪山状に配列して長径11km,短径7kmの入海(カルデラ)を囲み,中央にパレア・カメニとネア・カメニの2島(中央火口丘)を抱いている。前1450年ころに大規模な軽石噴火が起こり,もとの火山体の中央部は崩壊して現在のカルデラが形成され,ティラおよびティラシア島は厚さ数十mにおよぶ降下軽石,火砕流堆積物に覆われた。この軽石,火山灰はデイサイト質で,ポゾランセメントの材料としてスエズ運河建設にも大量に使用された。ギリシアの考古学者マリナトスS.Marinátos(1901-74)らはティラ島でこの軽石に埋積された古代都市(アクロティリ遺跡)を発掘し,この大噴火でミノス文明が破滅的な被害を受けたことを明らかにしている。ギリシアの哲学者プラトンが記した失われた大陸アトランティスの伝承(アトランティス伝説)は,この大噴火による悲劇を伝えるものだと信ずる人もいる。地理学者ストラボンは前197年の海底噴火の目撃者の記録を残しており,この噴火でパレア・カメニが生まれたと考えられている。ネア・カメニ(標高180.3m)は16~19世紀の噴火で生じたもので,1950年までときどきデイサイトの溶岩流や溶岩円頂丘を噴出した。火口付近には噴気孔がある。
執筆者:勝井 義雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報