溶岩円頂丘(読み)ヨウガンエンチョウキュウ

デジタル大辞泉 「溶岩円頂丘」の意味・読み・例文・類語

ようがん‐えんちょうきゅう〔‐ヱンチヤウキウ〕【溶岩円頂丘】

粘性の大きい溶岩が火口上に盛り上がったドーム状の火山。高さ数百メートルまでのものが多い。箱根山駒ヶ岳など。溶岩ドーム鐘状火山トロイデ

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精選版 日本国語大辞典 「溶岩円頂丘」の意味・読み・例文・類語

ようがん‐えんちょうきゅう‥ヱンチャウキウ【溶岩円頂丘】

  1. 〘 名詞 〙 火山の一形態。粘性の高い溶岩が噴出して生じた、鐘を伏せたような形の火山。箱根山中央火口丘の一つである駒ケ岳など。鐘状火山。トロイデ。溶岩ドーム。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶岩円頂丘」の意味・わかりやすい解説

溶岩円頂丘
ようがんえんちょうきゅう

火山形態の一種。溶岩ドームと同語。古くはトロイデ、鐘状火山などとよばれた。流紋岩、デイサイト安山岩のごく粘り強い溶岩が地表に押し出し、火口上に盛り上がってドーム状の丘をなす。

 1991年(平成3)から1995年にかけて長崎県雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)の山頂にデイサイト質の溶岩ドームが形成された。長さ1.2キロメートル、幅0.8キロメートル、比高約450メートルの大きさをもつ。地表に噴出せず、地下で固まり、地表をドーム状に盛り上げたものを潜在円頂丘(潜在ドーム)という。1944年(昭和19)から1945年にかけて形成された有珠(うす)山の昭和新山は潜在ドームの頂部の一部が地表に顔を出したものである。

 玄武岩質の溶岩でも固まりかけて粘性が高くなると溶岩ドームをつくる。溶岩ドームと厚い溶岩流との境は明確ではない。溶岩が次々と表面につけ加わって大きくなる外成的な成長の仕方と、溶岩が次々に内側に注入して大きくなる内成的な成長の仕方がある。北海道樽前(たるまえ)山頂、神奈川県足柄下(あしがらしも)郡湯河原(ゆがわら)町の幕山(まくやま)、鳥取県大山(だいせん)のほか伊豆諸島新島(にいじま)や神津(こうづ)島にも存在する。

[中田節也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶岩円頂丘」の意味・わかりやすい解説

溶岩円頂丘
ようがんえんちょうきゅう
lava dome; volcanic dome

粘性の大きい溶岩でできた釣鐘型をなす火山地形。溶岩ドーム,鐘状火山,塊状火山ともいう。火山噴火によって地表に出た流紋岩質やデイサイト質の溶岩が山腹まで流れず,火口付近に積み上がってできる。ドームが成長すると,膨張している地盤が砕け,その破片が転がり落ちて基部周辺に角ばった岩片の山が形成される。またドームが崩れ続けると,ドーム本体が埋もれるほどの破片の山ができることもある。カルデラ内に噴出した中央火口丘や,本来の火口から離れた寄生火山側火山)として存在し,比較的小規模で,直径は 2km以下,高さ 500m以下のものが多い。北海道の樽前山山頂部,箱根山二子山,中国山地の大山山頂部,九州の九重山雲仙岳の噴火によって出現した平成新山などがこの例である。最大規模の溶岩円頂丘としては,カリフォルニア州北部のラッセン山の上部を構成するものがあり,高さは 600m以上,直径は約 3.2kmを誇る。そのすぐ北にはチャオス・クラッグズ Chaos Cragsと呼ばれる,列をなした壮大な溶岩円頂丘群がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「溶岩円頂丘」の意味・わかりやすい解説

溶岩円頂丘 (ようがんえんちょうきゅう)
lava dome

粘性の大きな溶岩が火道からゆっくり押し出されて火口上に盛り上がり,側方にもふくらんで固化して生じた単成火山。基底直径1km以下,比高300m程度の小型のものが多い。溶岩の粘性が小さいほど釣鐘状から乳房状,洗面器を伏せた形へと横に広がる外形を示す。外形にほぼ調和してタマネギのような同心球殻状の内部構造(流理)をもつ。頂部は必ずしも円滑ではなく,小さな凹凸や環状のへこみがある。山麓には崖錐が発達する。単独に存在することはまれで,側火山や中央火口丘として生じた例が多く,またほぼ同時期に双子山として生じた例もある。
火山
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百科事典マイペディア 「溶岩円頂丘」の意味・わかりやすい解説

溶岩円頂丘【ようがんえんちょうきゅう】

トロイデ,鐘状火山,塊状火山とも。粘性の大きな溶岩からなり急傾斜の側面をもつ丘状の火山。火口の真上に溶岩が押し出されるにつれてでき,規則正しい流理構造をもつ。箱根火山の二子山,浅間火山の小浅間山,昭和新山などがその例。
→関連項目火山火山岩尖溶岩

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岩石学辞典 「溶岩円頂丘」の解説

熔岩円頂丘

主に熔岩で形成されたドーム形の火山体で,ドームの傾斜は熔岩の粘性によって決まる.粘性の高いSiO2に富む熔岩が火口から流出しても粘性が高すぎると火口から遠くに流れることができず,熔岩が火口から押出されて火口上に盛り上がり側方に広がり,側面が急傾斜の丘状の小型火山体(dome)が形作られる.更に中心部に熔岩が供給されて成長すると,外殻は内部から押されて割れ目ができる.熔岩円頂丘の断面形は一般に頂部に不規則な凹凸をもつ緩斜面,中腹の凸型急斜面,基部の崖錐からなる直線斜面に三分されるが,様々に変化する.一方流動性に富む玄武岩質熔岩はシートとして長距離に広がり,何回も噴出を繰り返すと緩やかな傾斜のドームが形成される[Holmes : 1944].

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世界大百科事典(旧版)内の溶岩円頂丘の言及

【火山】より

…溶岩が流出する噴火では,噴出口から溶岩流lava flowが出て固まった軽微なものもあり,溶岩の粘性が大きければ噴出口の上に高く盛り上がって円い丘をつくる。これを溶岩円頂丘lava domeという。とくにほとんど固まった状態の溶岩が塔のように突出して噴き出してくる場合には火山岩尖(火山尖塔)volcanic spineという。…

【火山】より

…その群には,(1)側火山群や後カルデラ丘群(中央火口丘群)などのように複成火山に付随したり,その一時期を示すもの,(2)複成火山とは無関係で単成火山だけで群をなすもの,の2種がある。(2)の例は男鹿半島の一ノ目潟,二ノ目潟などの目潟群(マール群),伊豆半島東部やフランスのオーベルニュにあるスコリア丘,溶岩円頂丘,マールなどの火山群など,大陸地域や島弧の内側に多い。このようなものを独立単成火山群と呼ぶ。…

※「溶岩円頂丘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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