改訂新版 世界大百科事典 「サービトリー物語」の意味・わかりやすい解説
サービトリー物語 (サービトリーものがたり)
Sāvitry-upākhyāna
古代インドの叙事詩,《マハーバーラタ》中の挿話の一つナラ王物語と共につとに有名となった。《マハーバーラタ》第3巻277~283章(プーナ批判版)に収められ,7章297頌より成る。マドラ王,アシュバパティがサービトリー女神に願かけてもうけた娘サービトリー姫は,シャールバ国の盲王デュマットセーナの王子サトヤバットと婚約するが,聖仙(リシṛsi)たちは新郎が1年後死ぬであろうと予言して,彼を捨てるよう勧める。この予言をがえんぜず彼女は彼と結婚し,死の予言の日に彼と行動を共にし,夫への愛と献身によって死神ヤマを動かし,夫の生命を救い,さらに彼女の美徳によってしゅうとの盲王は開眼し,一族に繁栄がもたらされた。夫婦愛,貞女の理想を描くものとして,この物語は〈パティブラター・マーハートミヤPativratā-māhātmya(貞女亀鑑)〉の別名を得ている。現代でも,彼女にちなんで,毎年ジュエーシュタ月(5~6月)に祭礼が催されている。
執筆者:原 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報