改訂新版 世界大百科事典 「シアノ金酸塩」の意味・わかりやすい解説
シアノ金酸塩 (シアノきんさんえん)
cyanoaurate salt
金イオンにシアン化物イオンが配位した錯体で,金(Ⅰ)および金(Ⅲ)の2種の化合物がある。カリウム塩は俗に金シアン化カリウムと呼ばれる。
ジシアノ金(Ⅰ)酸塩
シアン化金(Ⅰ)AuCNをシアン化物水溶液に溶かすとジシアノ金(Ⅰ)酸イオン[Au(CN)2]⁻を生ずる。塩としてはジシアノ金(Ⅰ)酸カリウムK[Au(CN)2]が最もふつうに知られている。これは上記の水溶液からも得られるが,塩化金(Ⅲ)の溶液にアンモニアを加えて水酸化物を沈殿させ,これをシアン化カリウム溶液に溶かして合成する方法がよく使われる。黄色の固体。結晶中には[N-C-Au-C-N]⁻のような直線陰イオンが存在する。水に対する溶解度150g/l(室温),約2kg/l(100℃)。金めっきに使われる。カリウムイオンを陰イオン交換樹脂で水素イオンと置き換えると,H[Au(CN)2]の組成の酸が得られる。[Au(CN)2]⁻はきわめて安定であり,また生成しやすいので,金属金をシアン化カリウム水溶液と反応させて溶かすことができる。
4Au+8CN⁻+O2+2H2O─→4[Au(CN)2]⁻+4OH⁻
テトラシアノ金(Ⅲ)酸塩
塩化金(Ⅲ)の溶液にKCNを作用させるとテトラシアノ金(Ⅲ)カリウムK[Au(CN)4]が得られる。無色の固体。陰イオンは次のような平面構造をしている。
カリウムイオンをイオン交換樹脂で水素イオンに置き換えるとH[Au(CN)4]・2H2Oの組成の安定な固体の酸が得られる。ここで水素イオンはH3O⁺の形になっていると思われる。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報