砂金(読み)サキン(その他表記)placer gold

デジタル大辞泉 「砂金」の意味・読み・例文・類語

さ‐きん【砂金/沙金】

金鉱床が浸食されて砂粒状になった金が水に流されて、河床海岸などの砂礫されき中に沈積したもの。しゃきん。→山金やまきん
[補説]書名別項。→砂金
[類語]黄金おうごん黄金こがね金銀純金十八金金塊金粉ゴールド

さきん【砂金】[書名]

西条八十の第1詩集。大正8年(1919)に自費出版。40編の詩、9編の童謡、3編の散文詩からなる。大正7年(1918)、雑誌「赤い鳥」に掲載された代表作「かなりあ」を所収。

しゃ‐きん【砂金】

さきん(砂金)

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精選版 日本国語大辞典 「砂金」の意味・読み・例文・類語

さ‐きん【砂金】

  1. 〘 名詞 〙 金鉱床や金鉱脈が風化浸食された結果、金が砂粒となったもので、ふつう砂礫(されき)とともに河床または海浜に堆積(たいせき)したもの。砂状、粒状をなして産する自然金。すながね。しゃきん。
    1. [初出の実例]「天平勝宝廿一年の春、陸奥より始而砂金参らせたりしには」(出典:九冊本宝物集(1179頃)一)

すな‐がね【砂金】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 「さきん(砂金)」を訓読した語。〔多識編(1631)〕
  3. 磁鉄鉱を含んだ砂。砂鉄(さてつ)。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「砂金」の意味・わかりやすい解説

砂金 (さきん)
placer gold

〈しゃきん〉ともいい,古くは〈すなかね〉といった。金鉱床が風化浸食を受けて,自然金が砂や礫とともに堆積したもの。自然金は分解されにくく,また比重が15~19と大きいため流水によるふるい分けを受け,河床や扇状地などに集まりやすい。普通,すりきずの入った丸みのある小粒を示すが,まれに塊金として産することがある。砂金鉱床としては,カリフォルニア,アラスカ,ウラル山脈が有名だが,小規模なものは世界各地に存在する。南アフリカ共和国ウィットウォーターズランドの含金ウランレキ岩は先カンブリア紀の砂金鉱床であり,現在,世界最大の産地となっている。
執筆者:

16世紀初期まで,日本の産金はおもに砂金採取によった。陸奥すなわち宮城県北部より岩手県南部にかけての砂金地帯をはじめ,下野,陸奥白河郡(産金地方はのち常陸へ編入),駿河,また平安時代末に佐渡でも採取した。砂金は河川流域その他の堆積地で砂土を水で流し,〈ねこだ〉にかけ採取する。中世後期には鉱石を石臼でひいて粉砂とし,淘汰することも行われ,近世にはこれは広く諸金山にみられた。また近世では,山根を掘り崩し,水流を導いて大規模に洗取した。中世以前,砂金は吹いて錬金ともし,ともに貴顕の間に贈答として用い,また日宋貿易の発展により重要輸出物となった。中世に砂金は禁裏や将軍への進献,社寺への奉幣布施に重用され,通例それに砂金囊を使用した。16世紀以後,山金製錬による産金が増大したが,砂金採取も盛んで,東北地方,佐渡西三川,駿河の安倍川および大井川上流など,また北海道松前で近世初期には盛大だった。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂金」の意味・わかりやすい解説

砂金(地学)
さきん
alluvial gold
placer gold

金鉱床の露頭部が風化・削剥(さくはく)され、金粒がおもに水流により運ばれて砂や礫(れき)とともに堆積(たいせき)したもの。河川や海岸では水により、砂漠では風で軽い鉱物が運び去られるため比重の大きい金が残り、堆積物中の金の品位が上昇する。このように比重の差で淘汰(とうた)、濃集されるため、河川では屈曲部の内側など、水流が急に遅くなる場所に多い。また砂金は比重が大きいため堆積物中を沈下してゆき、下位の岩盤の上面に集中していることもある。

 砂金は砂白金、砂クロム、砂鉄などとともに漂砂鉱床を形成するが、粒度は原鉱床から遠くなるほど細粒となっている。砂金は一般に銀を含み、金の純度は50~99%である。日本では北上(きたかみ)高地や、北海道の石狩(いしかり)川、雨竜(うりゅう)川、空知(そらち)川などの砂金が著名である。カナダやオーストラリアからは大粒の砂金(塊金、ナゲットnuggetとよばれる)を産し、最大のものは100キログラム以上もあった。なお、最大の産金国南アフリカ共和国の金鉱床は、約25億年前の砂金鉱床である。

[茂木 睦]

『加藤公夫著『北海道の砂金掘り』(1986・北海道新聞社)』『文葉社編・刊『趣味の砂金採り入門』(2003)』


砂金(西条八十の詩集)
さきん

西条八十(やそ)の詩集。1919年(大正8)6月、尚文堂書店刊。恩師吉江喬松(たかまつ)に献じられた自費出版の処女詩集で、1912年(明治45)ごろから19年(大正8)に至る間の作品を収録(「自序」)。『砂金』の部の詩40編、『遠き唄(うた)』の部の童謡9編、『曠野』の部の散文詩3編とからなる。「逃れんすべなし、/せめては小刀(メス)をあげて/この青き柚(ゆず)の実を截(き)れ、/さらばうちに黄金(こがね)の/匂(かぐ)はしき十二の房(へや)ありて/爾(おんみ)とわれとを防(まも)らむ」(「柚の実」)や「海にて」、「錶(とけい)」など、詩風は幻想的な甘美さのなかにも理知的均整さがある。日夏耿之介(ひなつこうのすけ)や堀口大学らとともに大正詩史のなかで高踏的象徴詩派の位置を占めながら多くの読者を得た。集中の童謡「かなりあ」は『赤い鳥』(1918.11)に載ったものである。

[高橋世織]

『『西条八十詩集』(1975・白凰社)』

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百科事典マイペディア 「砂金」の意味・わかりやすい解説

砂金【さきん】

砂鉱として存在する金。河床や海浜の砂礫(されき)中に細片で散在するが,ときには大型の塊金が出ることもある。純度は通常800/1000以上。磁鉄鉱,チタン鉄鉱,石英,モナズ石,ジルコンなどと共存する。小規模にはねこ流しで砂礫と分離,大規模には採金船で採取,比重選鉱を行う。日本では北海道の空知川,天塩川などに産する。
→関連項目金鉱砂鉱床山金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「砂金」の意味・わかりやすい解説

砂金
さきん
alluvial gold

細粒状の自然産金。原鉱石が風化作用で壊食され,包含されていた自然金の細粒が河川,海浜などで砂に混入して存在するもの。採集には,原始的な方法として金と砂粒との比重差を利用し,水流で砂粒を流し去って残った金の細粒を得る方法が用いられ,それに樋流し法,揺り箱法などがある。企業的には浚渫船を使って行われる。

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世界大百科事典(旧版)内の砂金の言及

【西条八十】より

…大正詩壇において,日夏,萩原朔太郎,佐藤春夫らとともに,通常〈芸術派〉とよばれる一群を形づくった。19年処女詩集《砂金》刊行。瀟洒な形式美の中に甘美な感傷性,豊かな空想的情趣を盛る。…

【砂金】より

…普通,すりきずの入った丸みのある小粒を示すが,まれに塊金として産することがある。砂金鉱床としては,カリフォルニア,アラスカ,ウラル山脈が有名だが,小規模なものは世界各地に存在する。南アフリカ共和国のウィットウォーターズランドの含金ウランレキ岩は先カンブリア紀の砂金鉱床であり,現在,世界最大の産地となっている。…

【砂金】より

…普通,すりきずの入った丸みのある小粒を示すが,まれに塊金として産することがある。砂金鉱床としては,カリフォルニア,アラスカ,ウラル山脈が有名だが,小規模なものは世界各地に存在する。南アフリカ共和国のウィットウォーターズランドの含金ウランレキ岩は先カンブリア紀の砂金鉱床であり,現在,世界最大の産地となっている。…

【金売吉次】より

…《平治物語》(古活字本),《平家物語》剣巻,《源平盛衰記》《義経記》などに登場し,各地に伝説としても伝わる。《玉葉》文治3年(1187)9月の記事に,当時,奥州を中心に砂金を売買する商人が活躍した由が見え,吉次も都と奥州とを往来する金商人のひとりと考えられる。《義経記》に,吉次は大福長者で,鞍馬の多聞天を信奉し,〈(牛若丸を)かどはかし参らせて,御供して秀衡の見参にいれ,引出物とりて徳つかばや〉と強欲で人買的なところを見せる。…

【金】より

…石英脈中に含まれることが多く,山金(やまきん)と呼ばれるものはこれである。大部分は岩石の風化によって砂金として川砂中に存在する。日本でも椀掛けといって,木製または金属製の揺り鉢に入れ,水を加えて揺り動かして砂や粘土と選別する方法が古来使われてきた。…

※「砂金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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