改訂新版 世界大百科事典 「シャミーリ」の意味・わかりやすい解説
シャミーリ
Shamil'
生没年:1797-1871
北カフカスのダゲスタン,チェチェンの山岳諸民族の解放闘争の指導者。アバール人の自由農民の子。1820年代,北カフカスの解放闘争の主力となったのはロシアの植民地化政策に対する聖戦を唱える戦闘的教団であった。彼らは,イスラムの一宗派ミュリディズムを奉じ,宗教的指導者イマームの絶対的権威の下で解放闘争を行い,20年代末~30年代初めにダゲスタン,チェチェンにイマーム国家を建設するにいたった。シャミーリは初代イマームのカジ・マホメットとともにこれを指導,34年3代目イマームとなり,以後25年間にわたり,ロシア・ツァーリ軍に対し幾多の勝利を収め,イマーム国家の教権・俗権の最高指導者として君臨した。59年圧倒的なツァーリ軍の包囲下に降伏,カルーガへ移された後,70年メッカへの出国を許され,71年メディナで没した。彼の評価(〈植民地化への抵抗,民族解放〉対〈歴史的反動〉)は,ロシア史を貫く〈大ロシア大国主義〉の歴史的評価にかかわる象徴的争点となり,繰り返し史学論争が展開された。
執筆者:高橋 清治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報