改訂新版 世界大百科事典 「シラミダニ」の意味・わかりやすい解説
シラミダニ
Pyemotes ventricosus
シラミダニ科のダニ。世界各国に分布する。本来は鱗翅目,鞘翅目,膜翅目などの昆虫類の幼虫やさなぎに寄生する。ときには穀類やわら類に大発生したこれらの害虫から二次的に発生したシラミダニが人を刺して,かゆみの強い皮膚炎を起こすことがある。欧米では牧草を取り扱う人たちに多く被害がみられ,hay itchあるいはgrain itchなどと呼ばれている。日本ではカイコの害虫としてよく知られており,養蚕家の被害があるほか,畳のわらに発生したものから皮疹を生ずることがある。体長は0.2mmほどであるが,雌は卵が成熟すると後体部が球状に膨れて2mmにもなる。生活史も特異的で卵胎生。親ダニの体内で卵は成長し,1雌より200~300匹の成熟期に近い親ダニが生み出される。雄ダニは雌ダニより先に生まれ,親ダニの膨れた後体部上で雌ダニを待ち,後から生まれてきた雌ダニと直ちに交尾して繁殖する。
執筆者:金子 清俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報