日本大百科全書(ニッポニカ) 「シーラーフ」の意味・わかりやすい解説
シーラーフ
しーらーふ
Sīrāf
イラン南部、ファールス州のペルシア湾口近くにある著名な港の遺跡。10世紀のアッバース朝時代に、バスラ、ウブッラとともに東西海上貿易の拠点として大いに繁栄した。シーラーフ商人の活躍は顕著なものがあり、遠くインド、東南アジア、中国との遠距離貿易に従事し、中国史料に、泉州に住んでいた大食(タージー)の「尸羅圍(しらい)」「施那幃(しない)」商人とみえるのはShīlāwī(シーラーフの人)を写したものである。各種織物類、金属製品、鉄鉱などを輸出し、中国の絹、インドや東南アジアの香料などを輸入して巨利を博した。ブワイフ朝治下の977年に大地震によって大破し、港が砂で埋まってその機能を失い、11世紀以後は衰微して、港外のキッシュ島にその繁栄を奪われた。13世紀に地理学者ヤークートがこの地を訪れたときにはまったく廃墟(はいきょ)と化している。現在バンダル・ターヒリーにその廃墟がみられる。
[佐藤圭四郎]