改訂新版 世界大百科事典 「ジェセル」の意味・わかりやすい解説
ジェセル
Djeser
古代エジプト第3王朝2代目の王。在位,前2635年ころ-前2615年ころ。サッカラの〈階段ピラミッド〉の建設者。第2王朝末期の国内の混乱を収拾し,初期王朝時代を通じて追求された天の神ホルス信仰に基づく〈神王理念〉を最終的に確立した。また宰相を頂点とする中央行政機構および州(ノモス)制に基づく地方行政機構を整備し,古王国の繁栄期を開いた。中央集権国家に君臨する神なる王にふさわしい王墓独自の形式として創出されたのが〈階段ピラミッド〉で,初め正方形のマスタバとして設計され,5度の計画変更の末,東西125m,南北109mの底辺と約62mの高さをもつ6段のピラミッドとして完成された古代エジプト最初の石造建築である。東西277m,南北545mの周壁内には,ほかに第2の墓(南墓),葬祭殿,王宮,セド祭殿,倉庫などを含み,木造草ぶきの建築を石材で模倣している。なお,工事を監督した宰相イムヘテプは,賢者として後代に神格化され,ギリシア人は医神アスクレピオスと同一視した。
執筆者:屋形 禎亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報