ホルス(読み)ほるす(英語表記)Horus

翻訳|Horus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホルス」の意味・わかりやすい解説

ホルス
Horus

エジプト神話の神。大ホルスなどの太陽神を意味するホルスと,小ホルスと呼ばれるオシリスイシスの息子であるホルスとがあるが,次第に小ホルスが大ホルスの役割を兼ねて優勢になったという。太陽神のホルスは鷹神とされるが,崇拝される地域によって異なった呼称と役割をもつ。たとえば「年長のホルス」 (大ホルス) は太陽と月を両眼とする空の神で,弟セトに勝利を得たと伝えられ,「地平線のホルス」は,太陽を意味し,次第に太陽神レーと混同されるようになった。「地平線を見出すホルス」は,カフラー王のピラミッド脇のスフィンクスの名で,太陽の人格化である。一方,小ホルスは父の仇を討ち,上・下エジプトの主となった。そのためファラオたちは皆「生けるホルス」の称号をもつ。彼を守護神とする都市はエドフ,オンボスなどで,たかを聖鳥とする信仰は全エジプトに広がった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホルス」の意味・わかりやすい解説

ホルス
ほるす
Horus

鷹(たか)の姿をした古代エジプトの男神。ホルスはギリシア名で、原語ヘル(またはハル)は「遠くにあるもの」を意味し、天空神・太陽神として広く尊崇された。プルタルコスの伝える「オシリス神話」では、ホルスはオシリスとその妻で妹のイシスの子であり、父オシリスがその弟セトにより殺されたので、のちにその敵(かたき)を討ち、上下エジプトの王となったという。この神話は「ホルスとセトの争い」というパピルス文書でも伝えられており、エジプト人によく知られていたテーマであった。ホルスはしばしば母イシスに抱かれ指をくわえている幼児として表され、ハルポクラテス(これもギリシア名で、原語はヘル・パ・ヘルド「幼児のホルス」)とよばれた。また鷹の姿のこの神の二つの目は太陽および月とみなされたので、ウジャット(ホルスの目)への信仰が生じ、ウジャット形の護符がよく用いられた。

矢島文夫


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