日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジオツーリズム」の意味・わかりやすい解説
ジオツーリズム
じおつーりずむ
geotourism
地域の地史や地質現象などがわかる大地の遺産を訪ね、古い時代の生物と環境との関係や、人類の文化的な足跡などを学ぶ観光旅行。地質観光ともいう。また、広義には地域がジオパーク(地質遺産)の保全を進めながら、博物館の整備や自然観察などの普及を図ることにより、持続可能な地域社会、経済活動の基盤をつくることも含めている。ジオgeoは、ギリシア語のge(大地)に由来し、地球や土地、地理などの意味がある。ジオツーリズムにおいて、重要な地質や地形的な景観を保全している地域をジオサイトgeositeという。
ジオツーリズムという用語は、1990年代中ごろからヨーロッパで使われるようになった。当時は、考古学や生態学を含んだ地質遺産を訪ねるだけでなく、自然環境保護を背景にした歴史遺産見学なども含む観光形態を示す意味でも用いられていた。その後、2000年代なかばごろになると、ユネスコが提唱・支援する世界ジオパークネットワークGlobal Geoparks Network(GGN)の世界ジオパーク構想が本格的に動き出した。GGNは世界ジオパークを認証するうえで、地質遺産などを資源とし、地域住民に収益をもたらす持続可能な地域社会を営むことを標榜(ひょうぼう)したことから、ジオツーリズムは世界ジオパークを中心にした観光形態を示すようになった。そのため、エコツーリズムやアグリツーリズムなどとは異なる観光形態として区別して用いられることが多い。
[編集部]