翻訳|community
一定の地域的範域において形成される人々の社会生活のまとまりをいう。地域社会の範域としては、一つには、居住の場、消費の場としての家族集団を中心とした近隣関係を、いま一つには、居住の場や消費の場だけではなく、生産労働の場としての企業体とか事業所や、余暇活動の場としての盛り場などを含んだものを考えることができるといえよう。
もとより、一時代前の人間の暮らしのように、消費生活や生産労働や余暇活動などの営みが家族や村社会の人々と同一地域でなされていたときには、これらの活動の場は重なっていたのであるが、しだいしだいに、生産労働や余暇活動の場が家族や村社会から離れて、別の場所で、別の社会関係のもとで営まれるようになると、地域社会の理解や把握においても、消費生活の場面に力点を置くものと、生産労働や余暇活動の場を含めて理解するものとに分かれてくる。このようにみてくると、地域社会の理解においても、何百年とか何世代にもわたって自然発生的、自生的に形成されてきた村的結合と、流動し移動する人々が一定地域に定住し、共住することを契機として、すこしでも住みよい街づくりへとお互いが努力し、取り組んでいくなかでつくられていく地域的まとまりとを、一つにくくってとらえるというのは妥当ではない、ということになるであろう。
地域社会のうちにも、村社会や生まれ故郷とかいった「生み込まれる」という色彩が濃いものと、住民の合意や連帯や共同の活動のなかから「つくられる」という性格の強いものとの二つがあわせ存在しているのである。それゆえ、今日、そして今後の日本における地域社会というものを考える場合には、それを自然発生的、自生的な地域的なまとまりであると理解するよりも、共通の目標や関心をもつ人々が意識的、計画的につくりあげていくものだととらえるほうがより適切で妥当であろう。
[園田恭一]
『園田恭一著『現代コミュニティ論』(1978・東京大学出版会)』▽『蓮見音彦・奥田道大編『地域社会論』(1980・有斐閣)』
一定の地域の人間関係によって結ばれる社会。地縁を契機として形成される社会であることから,〈地縁社会〉ともいう。かつて地域社会は,そこに居住する人びとの生活様式,生産様式,意識,態度などによって,他の地域とは異なる社会的特徴をもっていた。すなわち,農山漁村,都市はそれぞれ異なった社会性のもとに地域社会を形づくっていたのである。たとえば農村は生産と生活の場とが一致し,職業の分化はそれほどみられず,ある程度の自給自足性をもっていることが社会的特徴といえた。農村に比べて都市では,生産と生活の場を分ける多くの人びとが存在し,さまざまな職業が一定地域に混在しており,人口移動も激しいことに特徴があった。
しかし,日本では,1960年代以降急速に地域社会がその様相を変えた。高度経済成長期を契機として,工業化,都市化が全国に及び,伝統的共同体を急速に崩壊させたのである。この地域社会の変化は,農村においてとくに著しく,専業農家の激減,機械化,過疎化など生産様式や意識に大きな影響を与えた。このように社会全体の人口移動が盛んになるにしたがって,地域間に社会的特徴はほとんどみられなくなり,斉一的な社会を生み出すことになった。すなわち,都市的生活様式や意識が日本全体に広がったのである。この斉一性に対する疑問は,高度成長期の見直しと同時に,失われつつある地域社会を意識させるにいたった。1971年から3ヵ年の時限政策として自治省主導によるモデル・コミュニティ設定はその先駆けであった。その後,〈地方の時代〉〈コミュニティづくり〉などのスローガンとともに,地域社会再形成への機運が高まってきた。また,日照権や公害などの社会問題,幼児・児童あるいは老人の福祉問題などの現出は,住民の地域に対する意識を高め,住民自治による地域社会形成の動きを生み出してきた。このように近代化の過程で生じた個人の地域社会からの解放は,その社会的特徴の喪失の結果,かえって地域社会を強く意識させるにいたったといえよう。
→コミュニティ
執筆者:松原 治郎
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…狩猟採取社会および園耕社会(初期の原始的な農耕)では部族社会tribal societyがこれに当たり,農業社会では農村共同体rural community,Agrargemeinschaftがこれに当たり,近代国民国家の成立以降では国民社会national societyがこれに当たり,そして現代ではそれがしだいに世界社会world societyに向かって拡大しつつある。
[部分社会]
(1)地域社会 地縁によって形成される社会,すなわち地理上のテリトリーを共有する人びとから成る社会。マッキーバーがアソシエーションから区別してコミュニティと呼んだものがこれであって,農村と都市がその2大区分をなす。…
※「地域社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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