日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュリー制度」の意味・わかりやすい解説
ジュリー制度
じゅりーせいど
スポーツの競技大会において、判定を行う審判員を補助するために審判委員(ジュリー)を配置する制度。ジュリーjuryはもともと審査員団を意味する英語である。スキー競技やアマチュアボクシングなどでは、審査員団の最高責任者をジュリーとよぶことがある。本項では柔道について記述する。
2000年(平成12)、オリンピック・シドニー大会の100キロ超級決勝戦(フランスのダビド・ドゥイエと日本の篠原信一の試合)で誤審問題が生じ、ダビド・ドゥイエDavid Douillet(1969― )勝利の判定は覆らなかったものの、後に国際柔道連盟が公式に誤審を認めたことが、柔道においてジュリー制度導入が検討されるきっかけとなった。ジュリーが制度として導入されたのは2007年4月で、試合の判定の精度を高めるとともに、審判員の資質向上を図ることを目的としている。審判委員は技が見過ごされるなどの判定への疑義がある場合や、審判員に意見を求められた場合、試合を中断して判定を確認し、助言や意見を述べることができる。また、審判委員は主催者が設置した撮影機器の記録を参考にすることができる。ただし、最終決定は審判員の判定を尊重しなければならない。審判委員の資格は、各国の柔道連盟の審判委員会委員や顧問審判員などが有し、大会では審判委員2名を配置することが原則になっている。
ジュリー制度が適用されて初めてのオリンピックとなった2012年のオリンピック・ロンドン大会では、ジュリーの、判定への過度の関与がたびたび問題となった。なかでも、柔道男子66キロ級準々決勝、日本の海老沼匡(えびぬままさし)(1990― )と韓国のチョ・ジョンホ(1988― )の対戦では、いったんチョ・ジョンホの勝利判定があったものの、ジュリーの異議によって勝敗が覆り、海老沼の勝利となった。試合後、国際柔道連盟より最終的に正しい判断がなされたとのコメントが発表されたものの、審判の決定権をもつ審判員の判定が変更される結果となった。
[編集部]