日本大百科全書(ニッポニカ) 「スウォワツキ」の意味・わかりやすい解説
スウォワツキ
すうぉわつき
Juliusz Słowacki
(1809―1849)
ポーランドの詩人、劇作家。大学教授の家に生まれ、ウィルノ(ウィリニウス)大学法学部を卒業した。ミツキェビッチとともに、ロマン主義文学の創始者とされる。膨大な数に上る叙情詩、叙事詩を残したが、その作風はむずかしい詩語をふんだんに使った独創的なものである。彼はまた近代ポーランド演劇の創始者でもあり、西欧ロマン主義につながる多彩な形式の幻想的な戯曲『コルディアン』(1833)、『バラディーナ』(1834)、『リラ・ウェネーダ』(1840)などを書いた。また、祖国独立を願う愛国的詩人として1830~31年のポーランド蜂起(ほうき)に際しては一連の詩でこれにこたえた。31年以後は亡命生活に入り、スイス、イタリアに滞在し、パリで没したが、遺骸(いがい)は故国に運ばれ、南部の都市クラクフのバベル聖堂に納められた。19世紀末の文学運動「若きポーランド」の作家たちは彼を師と仰いだ。
[吉上昭三]