日本大百科全書(ニッポニカ) 「スカシバガ」の意味・わかりやすい解説
スカシバガ
すかしばが / 透翅蛾
昆虫綱鱗翅(りんし)目スカシバガ科Sesiidaeの昆虫の総称。小形から中形のガで、はねは非常に細長く、前翅と後翅がともに透明か、または後翅だけ透明な種が多い。太い胴部と、鱗毛で覆われた脚(あし)などとともに、はでな色彩から、ハチとよく似ている。しかも成虫はすべて昼飛性で、蜜(みつ)を求めて花を訪れることがあるため、よくハチと誤認される。世界中に分布しているが、熱帯には、同一地域にすむ大形で美麗なハチとよく似た種が分布している。
日本産として知られているものは25種ある。幼虫は、樹木、草本、つる植物の幹、茎、枝などにトンネルを掘って内部を食べる。害虫として注目されるのは、カシコスカシバ(カシワそのほかのブナ科植物)、コスカシバ(サクラ、ウメ、モモ、リンゴ)、カシワスカシバ(カシワ、クリ)、ブドウスカシバ(ブドウ、エビヅル)。ハチ類とこの科のガ類とが擬態関係にあって、同一地域に、外見上よく似たハチとスカシバガがすんでいれば、毒針をもつハチがモデルとなりスカシバガがこれに擬態することによって、生命の安全がある程度保証されることになろう。コシアカスカシバはアシナガバチの仲間と非常に似ているが、それがはたして利益になっているかどうか、擬態についてはまだ実証されていない。
[井上 寛]