エビヅル(読み)えびづる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エビヅル」の意味・わかりやすい解説

エビヅル
えびづる
[学] Vitis ficifolia Bunge
Vitis thunbergii Sieb. et Zucc.

ブドウ科(APG分類:ブドウ科)の落葉藤本(とうほん)で、樹皮は縦に裂け、皮目はない。小枝は帯赤褐色の綿毛に覆われる。葉は扁卵(へんらん)形で3~5裂し、基部は心臓形をなし、縁(へり)には低い歯牙(しが)状鋸歯(きょし)がある。表面は深緑色でしわがあり、裏面は初め帯白色、のちに帯赤褐色の綿毛に覆われる。雌雄異株。花は6~7月に開き、小さくて黄緑色巻きひげをもつ穂状の円錐(えんすい)花序に群がる。花弁は5枚、その末端で互いに癒合し、帽子のような形をしたまま脱落する。雄しべは5本、花糸は長い。果実球形で秋に黒く熟し、食べられる。北海道、本州四国九州、沖縄の山野に多く、朝鮮、中国に分布。つるの髄の中にすむ虫を釣りの餌(えさ)に、葉裏の綿毛を集めてモグサにする。

[籾山泰一 2019年10月18日]

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百科事典マイペディア 「エビヅル」の意味・わかりやすい解説

エビヅル

ブドウ科のつる性の落葉低木。北海道南西部〜九州,東アジアの山野にはえる。葉は互生し,長い柄があり,3〜5裂した心臓形で,裏面には綿毛が密生する。夏,淡黄緑色の小さな花が円錐状に密集し,葉に対生する。雌雄異株。果実は径5mmほどの球形,房となり黒熟し,食べられる。近縁ヤマブドウは北海道〜四国の山地にはえ,つるは太く木質,葉はエビヅルに似てずっと大きく果実は球形で径約8mm,紫黒色に熟し食用となる。ともに葉は美しく紅葉する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エビヅル」の意味・わかりやすい解説

エビヅル(蝦蔓)
エビヅル
Vitis thunbergii

ブドウ科の多年生つる植物。本州,四国,九州,朝鮮半島,中国に分布する。浅く3裂する大きな葉と,それに対生する巻きひげがある。若い葉と茎に淡い赤色の毛が密生し,これがえび色にみえることからこの名がある。低地に自生し雌雄異株で,6~7月頃淡黄色の小さな花を総状に多数つける。液果は径 7mmぐらいの小型で黒く熟し,ヤマブドウに似て甘く食用になる。

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世界大百科事典(旧版)内のエビヅルの言及

【ヤマブドウ(山葡萄)】より

…秋には美しく葉が紅葉する。 エビヅルV.ficifolia Bungeは山野に普通に見られる雌雄異株のつる性植物。葉はヤマブドウに似て小型,長さ5~15cmで変異が多く,多くは3浅裂しているが,ほとんど卵形で分裂しないものから,深く3~5裂するものまである。…

※「エビヅル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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