改訂新版 世界大百科事典 「スズ鉱物」の意味・わかりやすい解説
スズ(錫)鉱物 (スズこうぶつ)
tin mineral
スズを主要な成分とする鉱物をいう。スズ鉱物はそれほど多くなく,そのおもなものはスズ石cassiterite SnO2,黄シャク鉱stannite Cu2FeSnS4,ヘルツェンベルク鉱herzenbergite SnS,スタノイド鉱stannoidite Cu5(FeZn)2SnS8などである。このうちスズ石が最も重要な鉱石鉱物である。チタン鉄鉱に富む花コウ岩の活動に伴ってスズは濃集し,気成-高温熱水鉱床,ゼノサーマル鉱床などに産出する。またこれら鉱床が風化してできた砂鉱床も重要なスズの供給源である。タングステン,モリブデンなどと共生することが多いが,近年はニオブ,タンタル,希土類元素などと共生することが注目され,これら金属の効果的な分離方法が大きな技術的課題になっている。世界の主要な産地は,マレーシア,タイ,ボリビア,インドネシアなどである。日本では兵庫県明延鉱山,大分県豊栄鉱山などで少量産出(豊栄鉱山は1975年,明延鉱山は87年閉山)。
執筆者:嶋崎 吉彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報