スティギモロク(読み)すてぃぎもろく(その他表記)stygimoloch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティギモロク」の意味・わかりやすい解説

スティギモロク
すてぃぎもろく
stygimoloch
[学] Stygimoloch spinifer

鳥盤目周飾頭(しゅうしょくとう)類(亜目)厚頭竜類(下目)パキケファロサウルス科Pachycephalosauridaeに属する恐竜。アメリカ西部の白亜紀後期、約6850万年~6550万年前の地層から産出した全長約2メートルの二肢歩行の草食恐竜。属名の由来がおもしろく、「ステュクス」はギリシア語からきた「三途(さんず)の川の」あるいは「地獄の」という意味。「モロク」は旧約聖書でいう、子供を人身御供(ひとみごくう)にして祭った「モレク」というセム人の神のことで、恐ろしい犠牲を要求するものの意味。オーストラリア産のトゲトカゲの属名に使われている。たぶん、この恐竜の頭には、くちばしの端や側頭部から後頭部にかけて骨のスパイク突起)や鋲(びょう)が林立していることによるのであろう。そのすごさは、パキケファロサウルスPachycephalosaurusの段ではない。発見されたのは高く盛り上がった頭骨だけであるが、きわめて異様な外観を示している。ドーム状の隆起横幅は狭めで、側頭部から突き出た3~4本のスパイクのうち、長いものは10センチメートル以上もあった。体長が小さいために、スパイクが目だって大きくみえる。この頭部は同種間の争いに使われたらしい。額や側頭部で押し合ったり突き合ったりした可能性がある。大きなスパイクをからめて押し合ったかもしれないが、これは実際に戦うよりはむしろディスプレー行為が視覚的には重要であったろう。もし同種間の力比べならば、より高いドームとスパイクをもつ個体が有利であったろうし、頭部の飾りを競うディスプレー行為があったのかもしれない。スティギモロクは厚頭竜類のなかでも最後の時代の恐竜で、もっとも驚異的に華やかな頭の飾りをもっていることから考えると、厚頭竜類の闘争行動は時代とともに洗練されていき、ディスプレー器官も発達し、直接戦うのではなくて、高度に儀式化されたディスプレーの行動によって優劣が決まっていったのではないかと想像する人もいる。

[小畠郁生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「スティギモロク」の解説

スティギモロク

白亜紀後期に生息した鳥盤類周飾頭類の草食恐竜。全長約3メートル。パキケファロサウルスの幼体という説もある。

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