ストロガノフ家(読み)ストロガノフけ(その他表記)Stroganovy

改訂新版 世界大百科事典 「ストロガノフ家」の意味・わかりやすい解説

ストロガノフ家 (ストロガノフけ)
Stroganovy

16~19世紀ロシアの特権的商人企業家の一族。14世紀後半には農民だったが,15世紀には北ロシアのドビナ地方を拠点に商業活動で富裕化し,16世紀にはペルミ地方製塩業やシベリア毛皮交易で急速に巨富を築いた。獲得した巨大な所領では製塩や毛皮産業のほか農業,漁業,鉱山業などの諸事業を展開し,最盛期には数万人の労働者や農奴を使役したとされている。モスクワ大公に莫大な金銭援助をして中央集権化政策を助けるとともに,政府からウラル地方に広大な領地,要塞建設権,私兵保有特権などを与えられて,16~17世紀モスクワ国家のシベリア植民政策の先兵となった。エルマークのシベリア征服が一族の軍事的・経済的援助によるものであったことはよく知られている。ストロガノフ家は初め大商人の名称,17世紀には名誉民,18世紀には男爵ついで伯爵称号を与えられて貴族となり,ロシア帝政期を通じて多くの政治家や芸術・文化の保護・愛好者を出した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストロガノフ家」の意味・わかりやすい解説

ストロガノフ家
ストロガノフけ
Stroganovy

ロシアの富裕な商人,産業家の家系。白海沿岸の農家から発し,16世紀初めアニカがソリビチェゴツクで製塩業を営んで以来栄えた。 1558年イワン4世 (雷帝)からカマ,チュソバヤ両河畔に広大な所領を得たのをはじめ,その後もしばしばシベリア地方にかけて所領を獲得,それらの土地を開発するかたわら,製塩業,製鉄,木材,毛皮売買など広範な事業を営んだ。一家は町や砦を建設し,私兵を用いてウラル,シベリア地方に進出し,先住民の抵抗を排して領地を拡大した。その代表的なものが 81年のコサック首領エルマク・チモフェービッチのシベリア遠征である。 16世紀初頭のポーランド人からの解放戦争では,D.M.ポジャルスキーとミーニン=スホルークの解放軍に莫大な資金援助を提供し,ミハイル・ロマノフ即位に貢献した。その後も財政難に苦しむロマノフ朝諸帝にたびたび援助を与え,そのためピョートル1世 (大帝) は一家の者を男爵に,パーベル1世は伯爵に叙した。 18~19世紀を通じて多くの政治家,高官を生んだ。絵画 (イコン) ,建築,文学を奨励したことでも名高い。

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世界大百科事典(旧版)内のストロガノフ家の言及

【エルマーク】より

…ドン川地方出身ともカマ川地方出身とも言われ,最初はボルガ川を航行する船を襲う略奪コサック団の首領だった。イワン4世の特許状を得てシベリア開発に着手していた企業家ストロガノフ家に雇われ,1577年ころ多くのコサックとともにカマ川上流の要塞に行き,一家の所領をシビル・ハーン国のクチュム・ハーンの攻撃から守る仕事に就いた。79年(一説に81年)にはコサック隊を率いて本格的なシベリア征服遠征に出発し,ついにイルティシ河畔の激戦でクチュム・ハーンの軍に決定的打撃を与え,82年10月にハーン国の首都シビルを占領した。…

【ロシア・ソビエト美術】より

…またこの時代からそれまで神の世界を賛美してきたイコンが,地上の主権者をたたえるものに代わり,金銀細工で飾られた工芸的なものが登場した。細部描写と物語性が強まるなかで異彩を放っていたのは,北方の大商人ストロガノフ家のために細密画による家庭用の小型のイコンを制作した,ストロガノフ派であった。この派によって作品に制作者の名を明記することが始められた。…

※「ストロガノフ家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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