ウラル(読み)うらる(英語表記)Урал/Ural

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラル」の意味・わかりやすい解説

ウラル
うらる
Урал/Ural

ロシア連邦の大経済地域の一つで、ウラル山脈を中心として、ロシア平原と西シベリア平原の一部が含まれる。面積82万4000平方キロメートル、人口2035万4000(1999)。植生タイガ(針葉樹林帯)を主体として、南部にステップ(短草草原)、北部にツンドラ(永久凍土帯)がみられる。エネルギー資源には恵まれないが、多様な地下資源をもとに重化学工業が発展するロシア有数の工業地域である。

 地元資源を利用して発展した鉄工業はウラルの古い工業部門の一つであるが、今日、鉄鉱石の一部をカザフスタン共和国やクルスクから、石炭をカザフスタンのカラガンダから輸入している。また、ほとんどすべての種類の非鉄金属の精錬が行われている。機械工業はウラルの主要工業部門の一つで、重機械、輸送用機械、工作機械、農業機械などが地元産の金属を利用して製作される。化学工業はソーダ硫酸アスベスト石油、コークス化学が中心である。地元の木材を利用して木材加工業も発達し、製紙部門がその中心をなしている。工業発展によって水汚染をはじめとする公害問題が発生したが、改善の努力がなされている。農業は南部を中心に、春小麦、畜産に専門化している。鉄道は中部ウラル南ウラルを横断する路線、南北に縦断する路線が幹線で、電化が進められた。また、カマ川を中心に水運が発達する。石油、天然ガスのパイプラインが、中央アジア、西シベリアからウラルへ引かれている。

[中村泰三]

歴史

キエフ公国(9~12世紀)の時代に、この地方にはバシキール、コミ、ユグラなどの先住民がいた。12、13世紀ごろにはノブゴロドの毛皮商人が出現した。15世紀後半にモスクワ公国の勢力圏に入り、16世紀なかばのカザン・ハン国の滅亡後はロシア人の進出が図られ、イワン4世の特許を得た豪商ストロガノフ家がウラルに城塞(じょうさい)を建設、植民を始めた。17世紀にはウラルを越えて、シベリア、カザフスタンへとさらに植民が進められた。15、16世紀に製塩業が、17、18世紀には鉱山採掘や冶金(やきん)業が、農奴労働を使用して盛んとなった。南部のヤイク川(現ウラル川)を拠点に広がったプガチョフの乱は、この農奴労働者を巻き込んで、政府に脅威を与えた。木炭を燃料とした時代には、ウラルの冶金業は豊富な燃料、良質な鉱石、安価な労働力により、ヨーロッパ市場で重要な役割を果たしたが、18世紀末に石炭が燃料になると急速に衰退した。しかしソビエト時代になって以後、クズバスの石炭とウラルの鉱石の結合により工業地帯として復活した。1991年12月のソ連崩壊に伴い、ロシア連邦の一地域となる。

[伊藤幸男]

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