すらを(読み)スラヲ

デジタル大辞泉 「すらを」の意味・読み・例文・類語

すら‐を

[連語]副助詞「すら」+助詞「を」》
…でも。…なのに。
「にきびにし我が家―草枕旅寝のごとく思ふ空苦しきものを」〈・三二七二〉
(打消しの語を伴って)…さえも。
春雨の止まず降る降るが恋ふる人の目―相見せなくに」〈・一九三二〉
[補説]「を」は格助詞とも間投助詞ともいう。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「すらを」の意味・読み・例文・類語

すら‐を

  1. ( 副助詞「すら」と、格助詞、あるいは間投助詞の「を」が重なったもの ) その受ける語に対して例外的・逆接的な事態が起こることを示す。
    1. [初出の実例]「布肩衣(ぬのかたぎぬ) 有りのことごと 服襲(きそ)へども 寒き夜須良乎(スラヲ) 我よりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ寒(こ)ゆらむ」(出典万葉集(8C後)五・八九二)

すらをの語誌

( 1 )希望や否定の表現に用いられる場合は、次のように例外的特殊性が最小限の条件となり、「だに」に近い用法となる。「万葉‐二三六九」の「人の寝る熟睡(うまい)は寝ずてはしきやし君が目尚(すらを)欲りし歎かふ」、「仏足石歌」の「善き人の 正目(まさめ)に見けむ 御足跡(みあと)須良乎(スラヲ) 我はえ見ずて 石(いは)に彫(ゑ)りつく 玉に彫りつく」など。ただし万葉例の「を」は補読。
( 2 )「万葉集」に多く見られた「すらを」の形はその後ほとんど用いられなくなり、上代にわずかな例しか見られなかった「をすら」の形が漢文訓読系の文中に用いられる。

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