春雨(読み)はるさめ

精選版 日本国語大辞典 「春雨」の意味・読み・例文・類語

はる‐さめ【春雨】

[1] 〘名〙
① 春の季節に静かに降る雨。《季・春》
正倉院文書‐天平宝字六年(762)閏一二月二日・僧正美状「春佐米(はるサメ)阿波礼
② 緑豆(りょくとう)の澱粉からとった、透明、線状の食品。まめそうめん。
[2] 端唄(はうた)うた沢の曲名。二上がり。肥前小城(佐賀県小城市)藩士柴田花守作詞。長崎丸山の遊女の作曲という。嘉永年間(一八四八‐五四)江戸で流行。上方系端唄の代表曲。別名「鶯宿梅」。

しゅん‐う【春雨】

〘名〙 はるのあめ。はるさめ
文華秀麗集(818)上・江楼春望応製一首〈小野岑守〉「春雨濛濛江楼黒。悠悠雲樹尽微茫」 〔夏侯湛‐愍桐賦〕

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デジタル大辞泉 「春雨」の意味・読み・例文・類語

はる‐さめ【春雨】

春、しとしとと静かに降る雨。しゅんう。 春》「―やものがたりゆくみのと傘/蕪村
緑豆りょくとうのでんぷんから作った透明なめん状の食品。吸い物酢の物・鍋物などに用いる。ジャガイモなどを原料としたものもある。
[補説]作品名別項。→春雨
[類語]雨天荒天悪天雨空梅雨空雨降り雨催い雨模様遣らずの雨降雨一雨お湿り慈雨山雨小雨涙雨微雨細雨煙雨霧雨糠雨小糠雨大雨・どか雨・篠突く雨風雨暴風雨豪雨強雨雷雨にわか雨通り雨村雨驟雨夕立白雨スコール照り降り雨日照り雨天気雨狐の嫁入り春雨しゅんう卯の花腐し五月雨さみだれ五月雨さつきあめ地雨長雨淫雨霖雨涼雨秋霖秋雨時雨初時雨村時雨氷雨冷雨雨氷酸性雨

はるさめ【春雨】[作品名]

端唄うた沢節。柴田花守作詞。長崎丸山の遊女の作曲と伝える。嘉永年間(1848~1854)江戸で流行した。
日本画家、下村観山の作品。絹本着色による六曲一双の屏風。橋の欄干を真横から見た構図で、蛇の目傘を差した女性たちの姿を描く。大正5年(1916)制作。再興第3回院展の出品作。

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改訂新版 世界大百科事典 「春雨」の意味・わかりやすい解説

春雨 (はるさめ)

中国料理で用いられる,デンプンだけを原料としてつくった細い半透明の麵状の食品。中国では細いものを粉糸,太いものを粉条という。春雨の呼称がいつごろから行われているかははっきりしないが,明治末期の料理書《実用家庭支那料理法》(奥村繁次郎,1912)には春雨の語はなく,〈粉糸(そうめん)〉〈支那ぞうめん〉などと記してあるところから,おそらくこれ以降であろう。作り方はビーフン(米粉)に似ており,まず緑豆の粉をこねて底部に多数の孔をあけた筒の上部から入れ,底部の孔から沸騰している熱湯の中に線状に流しこむ。さらに加熱して水にさらし,乾燥させる。料理には熱湯でもどしてスープ,酢の物,いため物などに用いる。中国では北方に多く山東省竜口が名産地である。緑豆が少なく米の多い南方には,米を原料としたビーフンがある。近年ジャガイモやサツマイモのデンプンが多く用いられているが,緑豆に比べ煮崩れしやすく品質も劣る。日本では奈良県が主産地であるが,ジャガイモとサツマイモのデンプンを混ぜたものを原料とする。春雨は歴史の古い加工食品で,6世紀の農書斉民要術》に〈粉餅〉として製法が出ており,筒の代りに中空牛角を使用する以外現在の製法とほとんど変わらない。春雨とまったく同じもので薄板状にしたものを粉皮という。乾燥品もあるが,なまの粉皮をところてんのようにして街頭で売られている。また朝鮮そば(冷麵)はデンプンとソバ粉を等量に混合したものであるが,製法は春雨とまったく同じで,朝鮮そばからソバ粉を除くと春雨になる。
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春雨 (はるさめ)

端唄およびうた沢の曲名。別名《鶯宿梅(おうしゆくばい)》。嘉永年間(1848-54)にはすでに江戸で端唄として流行していたが,起源はもっと古く上方系で,作詞は柴田花守,長崎の丸山の遊女の作曲と伝えられる。〈春雨にしっぽり濡るるうぐいすの〉という歌い出しが曲名となった。うた沢でもその成立当初から歌われており,歌詞は端唄と共通である。なお,ほかに長唄,地歌,小唄にも同名の曲がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「春雨」の意味・わかりやすい解説

春雨
はるさめ

凍めんともいう。じゃがいもまたはさつまいものデンプンを糊状にし,0.8~0.9mmの細い穴から熱湯中に線状に押出し一定の長さに切断後冷凍室で凍らせたのち冷水中で溶かし,天日で乾燥させた食品。凍り豆腐寒天と同様に凍結を巧みに利用した伝統的食品であり,類似のものに唐めん,豆めんがある。

春雨
はるさめ

小唄,端唄,うた沢の曲名。『鶯宿梅 (おうしゅくばい) 』ともいう。柴田花守作詞,長崎丸山の遊女の作曲といい,嘉永 (1848~54) 頃江戸で流行した。ほかにも「春雨」という歌い出しの小唄が数種ある。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「春雨」の解説

はるさめ【春雨】

沖縄の泡盛。酒名は、「春」は希望、「雨」は恵みの意味を込めて命名。酒質の違いにより「ゴールド」「カリー」「ラメ」「ブルー」などの銘柄を展開。古酒もある。原料はタイ米、黒麹。アルコール度数25%、30%、43%。蔵元の「宮里酒造所」は昭和21年(1946)創業。所在地は那覇市字小禄。

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百科事典マイペディア 「春雨」の意味・わかりやすい解説

春雨【はるさめ】

デンプンから作った麺(めん)状の食品。本来は青ダイズから作るが,最近は芋デンプンから作ったものがほとんど。元来は中国の食品。よく粘ったデンプンを細い穴から熱湯中に押し出して凝固させ,冷水で洗い,天日で干す。熱湯に入れ軽くゆで戻し,酢の物,いため物に用いる。

春雨【はるさめ】

端唄,うた沢の曲名。長崎の遊女の作曲と伝える。幕末に江戸で流行した曲で,梅と鶯(うぐいす)を二人にたとえて歌ったもの。別名は鶯宿梅。

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栄養・生化学辞典 「春雨」の解説

春雨

 ジャガイモデンプンやサツマイモデンプンを原料に作る麺.中国ではリョクトウデンプンを用い,わが国でもリョクトウデンプンを使うこともある.

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デジタル大辞泉プラス 「春雨」の解説

春雨〔架空の組織〕

空知英秋の漫画、および同作を原作とするアニメ「銀魂」に登場する架空の犯罪組織。宇宙人である天人(あまんと)が組織する宇宙海賊団。

春雨〔落語〕

古典落語の演目のひとつ。初代三遊亭圓朝が「春雨・恋病み・山椒のすりこ木」を題に作った三題ばなし。

春雨〔泡盛〕

沖縄県、宮里酒造所が製造する泡盛。

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普及版 字通 「春雨」の読み・字形・画数・意味

【春雨】しゆんう

春さめ。

字通「春」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の春雨の言及

【ツリフネソウ(釣舟草)】より

… ツリフネソウに似るが,花序が葉よりつき出さず,花は葉下に隠れるハガクレツリフネI.hypophylla Makinoは本州中部以西に,また草丈がやや高く,花は黄色のキツリフネI.nolitangere L.(英名touch‐me‐not)は北半球温帯に広く分布し,日本各地にある。 ツリフネソウ属Impatiens(英名touch‐me‐not,balsam,jewelweed)はアジア,アフリカの熱帯を中心に500種ほどあり,種子の形,実生の形態,子房の構造,染色体数など,きわめて多彩な変化がみられる。日本には3種が自生するにすぎないが,ホウセンカ,アフリカホウセンカ(インパチエンス)などの品種改良の進んだ園芸植物も栽培される。…

【ホウセンカ(鳳仙花)】より

…夏の花壇や鉢物として広く利用されるツリフネソウ科の一年草(イラスト)。原産地はインド,マレー半島,中国南部。高さ30~60cm,茎は多汁で直立し,下部の節部はふくらむ。葉は粗い鋸歯のある披針形で密生し,葉腋(ようえき)に2~3花をつける。花は大きく花弁は5枚で幅広く互いに重なり,3片の萼のうち1片は湾曲した距となり,蜜腺がある。果実は5室,果皮は多肉で弾力があり,中の種子が熟して物に触れると,果皮は5片に裂けて巻き縮み,種子をはじき飛ばす。…

【中国料理】より

…蒸すかゆでたものと生野菜を切りそろえて盛り合わせ,調味料であえる。〈涼拌三糸〉(せん切り肉と野菜,春雨などのあえもの)。 焼鍋でいためたあと,調味料を入れて汁がなくなるまで煮つめる。…

※「春雨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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