日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズベイル」の意味・わかりやすい解説
ズベイル
ずべいる
Ahmed H. Zewail
(1946―2016)
エジプトとアメリカの国籍をもつ化学者。エジプト生まれ。アレクサンドリア大学を卒業。アメリカに渡りペンシルベニア大学に進学し、1974年に博士号を取得。カリフォルニア大学バークリー校で2年間の研究生活を送った後、1976年にカリフォルニア工科大学助教授に就任。1982年より同大学教授を務めた。
1980年代後半に超高速カメラを用いて、化学反応が進行している最中の遷移状態にある分子の姿をとらえるフェムトケミストリーfemtochemistryとよばれる研究の基礎を築いた。分子中の原子運動は1回の振動が10~100fs(フェムトセカンド、10-15秒)であり、超高速レーザーを用いてカメラのシャッタースピードを数十fsレベルにまで速めたことで、化学反応の経過をつぶさに見ることが可能となった。この功績により、1999年のノーベル化学賞を受賞した。ズベイルはこの手法を生物化学分野にも応用し、生体内における化学反応についての研究も行った。
[馬場錬成 2018年8月21日]