セギュール夫人(読み)セギュールふじん(その他表記)Sophie Rostopchine, comtesse de Ségur

改訂新版 世界大百科事典 「セギュール夫人」の意味・わかりやすい解説

セギュール夫人 (セギュールふじん)
Sophie Rostopchine, comtesse de Ségur
生没年:1799-1874

フランスの童話作家。ロシアの将軍で,ナポレオン侵攻のおりモスクワ総督であった父が皇帝の寵を失ったため,一家とともに1816年フランスに移住し,19年セギュール伯爵と結婚した。ノルマンディー地方のヌエット領地で生涯の大部分を過ごし,夫人の童話は多くこの地方を舞台としている。雨の日に幼い孫たちに話をつくり聞かせていたが,2人の孫娘が外交官の父とともにロンドンに移ったのがきっかけで,夫人は物語を書き始めた。その原稿が編集者の目にとまり,56年《新仙女物語》が出版され,以後《模範的な少女たち》《夏休み》《ろば物語》《ドゥラキン将軍》《ガスパールの幸運》などが次々発表された。カトリック信仰を説き,保守的傾向が見られるが,会話の多い,きびきびした語り口,スラブ的な感性とフランス的軽快な社交性のとけ合いが独特の魅力となり,ひろく子どもたちに親しまれている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セギュール夫人」の意味・わかりやすい解説

セギュール夫人
せぎゅーるふじん
Comtesse Sophie Rostopchine de Ségur
(1799―1874)

フランスの作家。帝政ロシア高官の娘としてサンクト・ペテルブルグに生まれる。失寵(しっちょう)を被った父に従って、1817年フランスに移住。2年後セギュール伯爵と結婚し、パリに居を構えるが、夫に顧みられず、オルヌ県私有地で生涯の大半を過ごすことになる。この土地を背景として孫たちのために書いた童話が、やがて大きな成功を収める。つねに善悪の性格の対比からなる彼女の物語の世界は、極端に単純であり、そこに描かれるモラルはすでに過去のものとなったが、軽妙な文体に支えられて、彼女の作品は今日なお子供たちの心をとらえている。『ロバの思い出』Les Mémoires d'un Âne(1860)、『ソフィの不幸』Les Malheurs de Sophie(1864)、『ドゥラキン将軍』Le Général Dourkine(1866)などの作品がある。パリに没す。

[山下佳代子]

『鈴木力衛訳『学問のあるロバの話』(岩波少年文庫)』『那須辰造他訳『セギュール夫人童話集』全6冊(1969・岩崎書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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