改訂新版 世界大百科事典 「セッター種」の意味・わかりやすい解説
セッター[種]
setter
原産地がイギリスの鳥猟犬。イングリッシュEnglish,アイリッシュIrish,ゴードンGordonの3種があり,日本では前2者が多数飼育されている。セッターの名は,鋭い嗅覚で猟鳥のありかをつきとめて知らせるときの姿勢(セット)からつけられたという。イングリッシュ・セッターは400年以上の昔から猟犬として活躍しており,スペインの古代犬セッティング・スパニエルとポインターから枝分れした犬種といわれるが,起源の詳細は不明である。ポインターとともに鳥猟犬種の王者で,性格はきわめて穏和。皮毛はやや長く絹糸状で滑らかである。毛色は白地に黒色,褐色,オレンジ色,レモン色,肝臓色などの小さいそばかす状の斑が散在し,大きい斑紋はない。またブルー・ベルトンという白と青みがかった混合色の細かい斑が全身に散在するものがある。ほかにオレンジ・ベルトン,レモン・ベルトン,リバー・ベルトンなどがあり,いずれも美しい高貴な感を与える毛色で,広く愛好されている。アイリッシュ・セッターはイングリッシュと同起源の犬種で,18世紀初期にイングリッシュと区別して育種され,体形,体格ともほとんど同様であるが,全身が金栗毛またはマホガニー色の優美な毛色であるのが特徴である。この被毛の美しさは光に映え,多くの婦人たちの寵愛(ちようあい)を受け,家庭犬としても広く迎えられている。イングリッシュの雄の体高は約65cm,体重は約28kgで,雌はやや小さい。アイリッシュの雄はイングリッシュの雄と雌の中間くらいである。ゴードン・セッターは18世紀末にスコットランドの第4代ゴードン公爵が改良を加えて作出したため,その名がついた。セッターのうちでは最も大きい。
→イヌ
執筆者:一木 彦三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報