セミタケ(読み)せみたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セミタケ」の意味・わかりやすい解説

セミタケ
せみたけ / 蝉茸
[学] Cordyceps sobolifera B. et Br.

子嚢(しのう)菌類、バッカクキン目バッカクキン科のキノコニイニイゼミ幼虫に寄生する冬虫夏草類の一種。高さは5~6センチメートル、地下の蛹の頭部から発生し、棍棒(こんぼう)形。頭と柄(え)の二部からなる。頭部はやや太く、黄褐色で、表面に細かい粒状のものが密につく。柄は白く、表面は滑らかである。頭部の粒状のものは、表層部に埋没して形成されるとっくり形の被子器の開口部である。被子器の中には無数の円筒形の子嚢があり、子嚢胞子をつくる。胞子は子嚢内では細長い糸状であるが、放出後細かくちぎれて飛散する。分布は西インド諸島、メキシコ、スリランカマダガスカル中東などと広い。日本では関東以南でみられる。日本にはセミに寄生する冬虫夏草類はきわめて多く、セミタケ以外は日本特産で、いずれも希品である。セミタケは本草(ほんぞう)書では蝉花(せんか)と書かれている。

[今関六也]

『清水大典著『冬虫夏草』(1979・ニュー・サイエンス社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セミタケ」の意味・わかりやすい解説

セミタケ(蝉茸)
セミタケ
Cordyceps sobolifera

子嚢菌類核菌類バッカクキン目バッカクキン科。ミンミンゼミの蛹に寄生し,羽化前に地中宿主を殺して春夏の頃キノコを出す。長さ7~10cmの棍棒状で,直径は太いところで5~7mm,細いところで2~5mmほどである。頭部は黄褐色,柄部はやや紅色を帯びている。ときに虫体の頭部を白色菌糸がおおうことがある。頭部の表面には無数の粒状突起がみられ,それらの下には被子器が形成される。被子器はとくり形ないし卵形で,8子嚢胞子を含む円筒形の子嚢を内蔵する。この種は日本,中国,西インド,南アメリカにかけて知られているが,オオセミタケ C. heteropodaは日本特産で,淡紅褐色ないし肉桂色をしており,セミタケよりも大きくエゾゼミアブラゼミなどに寄生する。セミタケは冬虫夏草 (とうちゅうかそう) といわれるキノコ類の代表である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報