改訂新版 世界大百科事典 「エゾゼミ」の意味・わかりやすい解説
エゾゼミ
Tibicen japonicus
半翅目セミ科の昆虫。日本各地の山地にふつう。北海道,本州,四国,九州,朝鮮半島,中国に分布する。大型種で,体長4~4.6cm,前翅の開張11.5~13cmである。体は漆黒色で,前胸背の外側,中胸背のW字紋は黄褐色である。翅は透明で,翅脈は暗緑色ないし黒褐色である。雄の腹弁は丸みを帯びるが角形を呈する。体下面は全体的に白粉で覆われる。7~9月に標高600~1000mの山地に見られ,種々の樹木のこずえなどに逆さにとまって,ギーという単調な声で鳴く。エゾゼミ属にはほかに4種が知られ,大型種ではアカエゾゼミT.flammatus(北海道,本州,四国,九州,朝鮮半島),小型種(体長3.2~4cm)ではコエゾゼミT.bihamatus(北海道,本州,四国,サハリン,千島列島),キュウシュウエゾゼミT.kyushyuensis(本州西部,四国,九州),ヤクシマエゾゼミT.esakii(屋久島)などがある。いずれの種も山地性で,一般に小型種は大型種より高標高帯に生息する。これら5種間では,鳴声,習性など互いによく似ている。
執筆者:林 正美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報